松の間:[973] ●吹き矢に関する歴史考察　(岩井虎伯氏　談)

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手裏剣術の画像・動画が、
他に類を見ないほど多く掲載されています。

[973]■ ●吹き矢に関する歴史考察　(岩井虎伯氏　談) 　by：鈴木崩残 　2007/11/06(Tue)15:08:29

>11/7-8:00　文末に「吹き矢の実際の命中率」に関する私の経験的な私見と、
>以前にも出しました同じ動画をもう一度、アップしておきました。

【吹き矢の歴史的考察】

●この資料は、私が1999年にまとめたものです。

ここに至った経緯を述べますと、
当時、「日本スポーツ吹き矢の会」の樋口氏は、
「戦場で吹き矢を使ったなどというのは間違った見解であり、
スポーツ吹き矢のイメージダウンにもなり、迷惑する人がいる」

ということを、再三に渡って述べていました。
のちに樋口氏は、私の名前を記載した上で、この見解を「撤回」しました。

●というのも、樋口氏が「自らのスポーツ吹き矢の会のイメージ」の為に
事実を捻じ曲げようとしていたことを察しましたので、
そういった個人的な利害関係を、歴史考察に持ち込むことは許せませんでした。

100歩譲って、当時の彼の「スポーツ吹き矢」に対するイメージアップ
を動機とする「努力の志」を認めたとしても、
それと歴史認識とは全くの別問題です。

●そこで、まず私の当時の推測での前提は、次のようなものでした。

・吹き矢は狩猟ばかりではなく、人体に対してもダメージがあり、
　それ単体での殺傷力はなくとも、相手の攻撃に乱れを生ずるには
　充分な効果を持つこと。これに毒物が加わるとさらに強い武器になる。

　(これは実際に、私が生身で、他人の吹いた矢が自分の身体に
　　刺さった「激痛経験」があるので分かります。)

・弓矢と違い、矢が小さいので視覚では捕らえにくいこと。

・体系として残らなかった大きな理由は、
　ようするに、吹けば誰でもが刺せてしまうものなので、
　特別に、武術といった、大げさなものにまとめるような意味が、
　全くなかったということ。

・ただし、戦場や暗殺に使われた吹き矢が僅かに残っている可能性はあること。

・これは、1999年以後、何年か経過してのちの私の見解であるが、
毒物の最も怖いところは、その場では倒せなくとも、実質的には
戦闘員を戦闘不能にすることが出来る点である。

真偽はわからないが、植物性の毒物以外にも、糞尿や動物の死体から
抽出した腐敗物の「雑菌」を針や手裏剣の刃に塗るという方法もあったようである。

常識的に考えると、この結果、傷をつられた方は、遅くとも、その晩には
高熱を出したり、化膿が進行する。

こういう傷は、見た目の傷口が小さいことを理由に、
大抵の場合には、「大したことはない」としてしまい、
消毒にもなっていない簡単な処置で、そのまま放置するのがオチである。

昔は薬草や、それを取り扱える医師も少なかったであろうから、
ほとんどの場合には手当てが遅れるので、
その翌日には戦士として正常に闘える状態ではなくなることから、
実質的には、倒したも同然という結果となる。

私も、吹き矢の針についていた雑菌や、
他の刃物による、「ほんの浅い切り傷」による化膿とその全身的なダメージを、
何度か経験したことがありますので、

それがどれだけ持続的な身体的ダメージのみならず、
戦闘意欲を削ぐような「心理的ダメージ」を与えるかはよく理解できます。

同じような方法としては、プチ毒物によって、
相手の兵士を下痢や食中毒にするといった戦法も当然、
昔には戦略の候補としてはあったものと思われます。

**************************************************************

そこで、私は事実関係の情報を取材するために、下記の3名の方に
私信で質問を打診しました。

1/武神館忍法道場

2/滋賀県「甲賀忍術博物館」

3/武備舎「岩井虎伯」師範。

そこで、戴いた回答は次の通りです。

これは、初見師範からのコメントを中太啓治氏を通じて受け取ったものです。

■雲隠流忍法の中には、吹き矢が実在する。矢に動物の体毛をつけ、
　その先端に毒を塗って飛ばします。

■その吹き矢は、障子を突き破って飛んでゆくほどの威力がある。

■吹き矢の実戦における最大の利点とは、「音がしないこと」である。

なお、私「崩残」自身も、当該すると思われる吹き矢の展示物を、
長野県の戸隠奥社にある「忍術資料館」にて目にしています。

次は、甲賀流博物館からの回答です。

■当時使われた筒は木製で、長さは1.5m以上。内径は1cm以上。
　弓矢や鉄砲と並んで、城の上から敵に放つというものが、
　使い方としては、主流であった。

■息受けの部分は、竹と漆塗りで出来ていて、針部分も竹製が多い。

■外見は真っ黒で、加工は刃物で削る他には、焼き串などでも加工された。

　現在、当時の吹き矢が残っている可能性はほとんどない。
　ただし、城の中にはあったので、
　城から出た骨董品の中には希にはある可能性はなくはない。

私崩残が、スライドショーでレポートした展示品の吹き矢は、
後世のレプリカであったとしても、また本物であったとしても、
外形寸法から考えても、この「城で使われたもの」に該当しそうです。

●さて、次は「秘武器」という師独自の造語を、一躍、世に知らしめた、
古武器研究家として著名な「岩井虎伯」師範からのものです。
(注・「秘武器」と「隠し武器」は定義上、別のもの」です・)

________________岩井師からの回答___________________

■お尋ねの件、送付いただきました「吹き矢の由来についての小論」
を読ませて戴きましたが、概ねよろしいのではないかと思います。
以下に、私の吹き矢に関する見解を述べさせて戴きますが、
忍術と吹き矢の件については触れないでおきます事をご了承下さい。

★1/吹き矢が流派武術として体系化されなかったのは何故か?

■飛行距離が短く、また風に左右され、遠くの敵を狙う事が困難なこと。
飛行距離を長くするには、長大な吹き筒が必要になる。

■吹き矢筒の製作に於いて、薄く軽量にすると耐久性に欠ける。
折れたり潰れやすく、また軽すぎると、
格闘戦において他の武器の代用には不向きである。

■めまぐるしく動く敵には狙いが定まらず、特に合戦時においては
武器としての用をなさない。

■殺傷力に欠ける。特に甲冑や衣服の上からは刺さりにくく、敵の顔面や目を
狙うしかない。毒針を使用しなければ、武器としての効力に欠ける。
また、毒矢を使用しても、自分自身を傷つける恐れもある。

■鉄砲や弓矢の発達で武器としての効力が失われた。

★2/では江戸時代のものと思われる吹き矢が残っているのは何故か?

■武術流派の表看板(剣術、槍術、薙刀、柔術)に付随し、外之物・隠し武器として
秘伝視されて、免許者以外には伝えなかった為。

■小鳥や小動物を獲る為に、狩猟道具として使われた為。
この場合には、血液循環毒が使われる。たとえばトリカブトの根の
ブスの毒のように、「口中吸引では無害の毒」が使われたと思われる。

■遊行玩具として、遊郭での遊びや、大名などが遊び道具として使った。

■手裏剣と同様に、公の場での稽古が禁じられていたか、または、
秘密裏に稽古していた者がいた。
ただし、暗殺武器に悪用されないために、
幕府の禁令下に置かれていたという推測も不可能ではない。

■武器としては格闘時に耐えうる物ではなかったが、数奇者が用いたか?

以上が、吹き矢に関する私の見解でありますが、
本科の吹き矢については、以前、骨董市で某大名家から出たという
嫁入り道具や、大名道具と一緒にあった物を見たことがありました。

それは和紙を一尺二寸ほどの筒状に巻き固めたものを、
黒漆で塗り固め、筒中は朱漆で、金銀の蒔絵が施されていました。

矢は金唐革製の箙(エビラ)に納められており、矢の息受け部分も、
色絵和紙に透漆がかけられていました。

この吹き矢は購入しようと思い、店主と掛け合いましたが、
十年ほど前(今から約20年ほど前)で、十五万と言われ、
予算がなく、買う事が出来ませんでした。
他に、遊郭で遊女が遊び道具として持ちいち吹き矢の完品も
見たことがあります。

■時々、骨董市などで、筒の短い吹き矢や、矢だけのものを見かけることが
ありますが、状態が悪い上に、価格は高いので、
日本製の本科で購入したものはありません。

ただし、東南アジア製で、牛骨を竜の形に彫刻したニ尺ほどの長さのものは、
一本持っております。三段つなぎになっていおり、
竜の尾を外し、息受けの綿がついた矢を入れて吹くと、
竜の口から矢が飛び出す工芸品です。

■また知り合いの骨董店には長さ四尺ほど、太さ一寸五分ほどの吹き矢筒が
置いてあるのを見ております。
おそらくは桐材を筒状に加工して、和紙を漆で塗り固めたものと思われます。

■私も武術としての吹き矢には強い関心がありますが、今までの秘武器研究では、
対象外にしてきました。それは江戸時代のものと証明できる遺物がほとんどなく、
また、あったとしても、非常に高価であり、
また状態の良いものが少ないからであります。

貴殿のように武術としての吹き矢の可能性を研究、鍛錬されている方は
貴重な存在であると思います。

***************************************************************

■　追　伸　■

★3/吹き矢の材質について

■このことについては、まず、日本の文化というものを、
第一に考えてみる必要があります。

古来から多湿の我国は、生活文化が「木と紙」で成り立っております。
(衣服などの布、武器、農具、刃物などの鉄や工芸などの貴金属は
万国共通でありますが。)

故に、吹き矢筒の材質は、実戦用でも遊戯用でも、木(竹を含む)か、
和紙を漆で仕上げたものが、普通であったと思われます。

■金属、ことの鉄の場合には造るのが難しく、また錆がついて保存が
難しいことから、金属製のものは皆無であっただろう。

★4/吹き矢筒の材質考

■桐などの軽く丈夫な材質の中を、半円状にくり貫き、二枚張り合わせて
筒状に仕上げ、外も内側も漆仕上げを施す。

■垂直な丸棒状のものに、和紙を張り合わせ、漆仕上げを施す。

■竹やウツギなど、中身が中空の材質の中をくり貫き、漆仕上げを施す。
古来から、釣り竿や笛を造る技術があるので、容易に出来る。
また、ご存知のように釣り竿や笛を造る技術にも、数段接ぎの技術がある。

■当然、矢の「息受け部分」も、紙や竹皮を円錐形に丸めるか、桐材などを
くり貫いて造る。このとき、当然、湿気止めのために、漆を塗る。
針部分は、鉄針か、または竹針を使う。

■なお、吹き矢自体が、「秘武器(=隠し武器ではない)」である為、
無理に偽装する必要はなく、それほど長いものは必要ない。
暗殺や物陰から狙うのであれば、近距離ほど射ち損じがなく命中率が高い。

■一尺から二尺ほどの長さの筒であれば、袋に入れて携帯すれば、
釣竿にしか見えない。
最初から、笛や釣竿に偽装して作り、
矢は別に携帯すれば、見破られることはない。

■余談ながら、鉄や真鍮製の吹き矢が造られなかった訳は、
江戸時代の技術では、金属で真円の筒状の物を作る技術は、秘伝であり、
幕府から許可を受けた鉄砲鍛鍛冶にしか造る事は許されなかった。

鉄砲筒を造る技術には「巻き張り・ウドン張り」の二つがあるが、
巻き張りでは、薄い筒を造るには適さない。ウドン張りで、ある程度の薄い管は
造れるが、筒内を平坦に磨くには、特殊なセン(ヤスリ)を造る必要があり、
技術的にも困難であった。
昔の鍛冶屋は、当然、ヤスリも各自で製作したので、
量産されて販売されるものもなかった。

また真鍮は、江戸時代においては、金や銀に次ぐ貴金属であったので、
工芸、装飾品以外に用いられることは皆無であった。

★5/忍術についての見解

忍びの本来の仕事は、情報収集や謀略が主体であり、そのためには、
絶対に正体を見破られない事が必須であり、
騒動を起すことや、暗殺や戦いとは無縁のものであった。

現代における忍者に対する思い入れは、古くは講談や書籍や、
小説、新しくは映画や劇画(漫画)からの影響が強く、現実離れしている
ように思えます。

また「御庭番」と称する情報収集のための忍者を配置したのは、
江戸時代でも、八代将軍からである。
江戸の幕末の剣豪の「平山行蔵」は、御庭番の家に生まれた御庭人であったが、
忍法などは伝わっていなかったらしく、剣術、柔術、砲術、などの
武芸十八般を学び、多くの武術、兵法の著作物を残したが、
忍法については、何も書き残していない。

また幕末には、万川集海・忍秘伝などの忍術の秘伝書と言われる書物は、
版木として誰でも見ことは出来たが、
その内容が、現実には何の役にも立たなかったからか(?)、
ほとんど興味を示されなかったようである。

　　　　　　　　　　　　　　　　武備舎　岩井虎伯(作夫)　拝

以上が、平成11年、5月20日から31日にかけての、2通の返信です。

*******************************************************************

●なお、前にアップした吹き矢のレポードのスライドは、
ここに移動しました。

これらの考察などを元に、もう一度、この吹き矢の長さや造を見ると、
もしも本物ならば、
現代に残っているのは珍しい、とても貴重なものだと分かると思います。

【戦国時代の吹き矢か？】

http://www.youtube.com/watch?v=71UO_e35W4Q

■本来は撮影禁止だったのですが、
「古い時代の武器に興味があり、レポートを書きたい」と言ったら、
そこにいた管理者の方が快く許可してくれました。

さらには、「テーブルの上に乗って測ってもいいですよ」、
とおっしゃって下さり、
巻尺まで貸していただきまして、本当に感謝しております。

■城の中から出た骨董品の中に、
希にこうしたものが残る事もあるらしいのですが、
ほとんどは無価値な「ただの木の棒」や「農具」と間違われてしまい、
捨てられてしまっています。

私の推測では、こうした「長い吹き矢の筒」は、
日本全国に、たったの３本も残っていないと思います。

もしも鑑定士が調べれば、内側に矢先に塗られたトリカブトの根の毒の
痕跡などが検出できるでしょうし、また年代の特定も出来るでしょうが、
私には当然そこまでは分かりません。

ですから、近代の古武器マニアの人が作ったという可能性も
拭いきれません。

●ただし、見ると、吹き口付近の木が手の摩擦によって
「擦れて変色している」ことから、
実際に昔、戦か、または暇なときの遊戯か、はたまた狩猟目的で、
「使い込まれた」という可能性が高いです。

組み立て式の時にあるジョイント部分のような「つぎ目」は一切ないものですが、
製造法としては、くり貫きによるものではなくて、
刀の鞘のように、二枚の半円柱の長い木を張り合わせて筒にしてありました。

残念ながら、肝心の「矢」は展示してありませんでした。

●Ｙｏｕ－ｔｕｂｅの動画で、英語でもコメントしたように、
もしも本物ならば、その古武器の研究材料としての希少価値に対して、
私ならば、値を１００万円は付けますね。
なにしろ、おそらく日本全国でも、こういうものはまず残っていませんから。

ただしこれが贋作ならば、５万から、よくて１０万といったところです。

●戸隠村の忍術資料館にも、吹き矢はあるのですが、
すべて暗器としてのものですから、小型のものでした。
これが中太師や岩井師から回答を戴いた中の「小型のもの」と思われます。

■ただし、実際に吹き矢を知っている人には分かりますが、
5mというごく至近距離であっても、本当に精密に相手の首などを狙える
精度のためには、筒は約1ｍを必要とします。
しかも、それは現代の工業用の金属管という精密な筒を使ってでもです。

そのことから、相手の「静止した顔面大」を狙うのにさえも、
本当に使用に耐えられる吹き矢があるとしたら、
内径の加工や、矢の加工が非常によく出来たもので、
しかも、筒の長さは、どうしても80cmを下回ることは出来ません。

それを下回る長さの筒では、
ほんの少しでも出来の悪い矢は、ほとんどの場合に、直進しません。

●そのために、本当に使用に耐えられるのはどういうものかを
摸索した結果、私が使っているものは、
筒は最低でも130cm、または150cm筒を使います。

矢は軽い材質にせずに、円錐状にも造らず、
アメリカの競技用のものや、原住民が使うような、息受けを模しています。

ただし現存する全ての吹き矢と私のが違う点は、
矢の重さです。太さ2mmで、4g内外の針を使っていますので、
少々の風雨には全く動じません。

そして人体大を狙える射程距離は約15m以上です。
もっとも、遠距離という意味では、樋口氏のタイプの矢は、
放物線軌道で50メートル以上到達しているはずですので、
針が重い分、飛距離では劣りますが、
威力と風雨の影響が少ない事では、国内一と自負しております。

次はYou-tubeにだいぶ前にアップした「ロウソクの火消し」の動画です。
↓
http://www.youtube.com/watch?v=dPpI7ZLp-DM

●次のものは、
「どうやって矢を、速く装填するか」という私の独自の方法です。
最低限、これが出来ないと、
めまぐるしく動く標的を撃つことは出来ません。

あとは9mの距離で、刺さると揺れるような「吊るした的」を狙っています。
これが「けっこう、難しい」のです。

もしも距離が12m以上になると、
たぶん、弾速の出るエアガンですらも、少し練習をして慣れないと、
(数撃っての「まぐれ当たり」ではなくて)、
正確に、意志したとおりに狙い撃つのは難しいと思います。

http://www.youtube.com/watch?v=_xUcRx63OvA

■無数のテストを何年も繰り返した結果ですが、
内径約11mmで長さを130cmとした筒の場合には
矢が4gを超えてしまうと、かなり失速します。

それを解決するには、筒の内径を大きくしたり、長さを長くして、
威力を増す必要がありますが、その分、吹きにくくなってきます。

肺活量などはあまり関係なく、
私の方法は、頬を膨らませて口内の息で吹くという方法ではありません。

丹田に、かなりしっかりと力を入れて、「下腹で」吹かないかぎり、
そして、さらには瞬間的に息を爆発させるように「舌」を使わないと、
この重量のある矢は、10間先までは、正しく到達しません。

ただし、ガンショップなどで売っているオモチャ、あるいは
競技用の吹き矢ならば、
そこまで、マジに真剣にやらなくとも、ある程度の距離は出ます。

_______________

★ . 　　

[972]■ ■おもしろ映像 　by：崩残　2007/11/02(Fri)18:48:41

>11/4 6:50 手裏剣側の戦略考察の参考のために、槍の動画を追加しました。

http://www.youtube.com/watch?v=S76aGs5mVec

http://www.youtube.com/watch?v=a4GHAF-F-wM

http://www.youtube.com/watch?v=yhzX9GZ3qKE

http://www.youtube.com/watch?v=APTur6EEqaY

手裏剣は本当に使われたのか?「その2」

■ところで前回の投稿で、
残っている記録があまりにも少ないことから、
常識的に考えても、手裏剣が昔は価値がなかっただろう、
という考察をしてみましたが、

ただし、実際に現代で剣と併用して模擬手裏剣を使った場合には、
一転して、それが有効であることが分かりました。

つまり、現代でやってみて有効性が認められたからといって、
過去の時代にそうであったとは断定できないというところが、
「論理のポイント」です。

逆に言うと、過去の時代に有効であったと(記録もないままに)噂をされていたものが、
現代でやってみたら、ただの嘘で有効でないということも考えられます。

■手裏剣に関しては、立合というものが本当にあったかどうか、
それが記録に残っていないだけなのか?
それとも、実際に少なかったか?については、
私は極端にそれは少なかったのだろうと見なしています。

ものの本によれば、仇討ちの時に使われた記録もあるようですが、
今のような情報化社会ではない昔の人の場合には、
情報源、つまり「取材源」が極端に少ないので、
そうした手裏剣の立会いが、たまたま見つからなかっただろう、という推測も出来るものの、
その一方では、

昔の人というのは、噂好きですし、何かの立合で珍しいものを見れば
たちまち、講談師がネタにするでしょうし、
また勝った方は、武勇伝のように自慢したりもするでしょうから、
そうした誇張された噂話が多少は数が残っていてもいいはずだというのが
私の推論です。

そこから考えると、たとえば、「中級手裏剣術の第三版」でも
引き合いに出した事例というのは、
物体や小動物に、刺す技量があっただけという記録も多く、
また、遠くから、たまたま「まぐれで当たっただけ」の、
大げさな話だったりしていて、

「明確に、相対した形での対戦記録」は、(ごくごく一部を除いては)ほとんどありません。

そうなると、やはり、過去において、立合で使われた可能性は
私は「低い」と思っています。

仮に、流派の枝分かれや、「伝承の捏造」が盛んになった「江戸時代」に、
そうした試合があったとしても、不思議ではありませんが、
あったらあったで、「珍しいもの好きの江戸時代の人びと」にとっては、
そうした見聞録は、もっともっと多く残るはずです。

■ということで、
現代で、対戦シミュレーションをやってみると、
剣術との併用をされると、やられる側の方は、たまったものではなく、
どうやら、かなり有効だと思えたのですが、

逆に、本当の昔の人たちには、その有用性が分からなかったので
使わなかった可能性もあります。

また、そうした形式の試合というものが、当時の人の「良識」では、
「隠し武器として使うなどは、立合ではもってのほか」であったり、

そればかりか、ちゃんと構えていてさえも、
「ただ手裏剣を使う」という、それだけでも「卑怯」と見なされて、
その使用を人々が「自主的に控えた」という可能性もあります。

本当の真相は、むろん、分かりませんが、
こうしたことを推察するのは面白い遊びです。

手裏剣は本当に使われたのか?「その3」

●次の動画を見てみてください。
戦国時代に弓と並んで主力のひとつであった槍を想定すると、
手裏剣側が、どういう間合いに制限されてくるかがよく分かると思います。

明府真影流の染谷氏は、
その著書の中で
「4間という距離は、槍が届かないので、充分な射程距離である」と述べていたり、
また、これは、染谷氏のみならず、
手裏剣という世界では、疑問視されないままに「定説化」していますが、

果たして、そうだろうか?

前回の、「市村氏のレポート」にもあったように、4間という距離は、
たとえ速度が出ると言われている軽量剣だったとしても、
明らかに、手裏剣が避けられてしまう可能性が大きくなる距離である。

また、軽量剣の場合には、現実には、
実は、ダメージが少ないという事実を読まれてしまったり、
またはあらかじめ相手にその事実を知られていたら、
剣術や槍の側は、必ず突進して間合いを一瞬で詰めてくることだろう。
↓
http://www.youtube.com/watch?v=DCeHuv2M5NY

●今回見つけたものは、非常に良い参考になる、
きちんとした稽古風景の動画だったので、これを参考にしてみました。

また、槍が、筒の中を通って前後するという工夫もされているようです。
左の手との摩擦を無くすことが出来るので、大変に優れた武器です。

冗談ぬきに、こうした仕組みは、水面下の魚を狙って獲る時などには、
狙いが正確に付くので、非常に良い道具になります。

●ちなみに、槍の先に布をつけたり、この螺旋状に動かす方法は、
特に、ここの独自のものというのではなくて、
中国武術の槍術その「まんま」ですが。

●さて、最大で3.6mの槍があったとして、踏み込みと突きの距離を
考えると、直線攻撃してくる幅は、3間近くもあります。

こうなると、間合いをとっている場合には、
少なく見ても、3間強の距離から手裏剣を投げないとならないわけですが、
「3間半の距離から投げた剣」は、
相手に避けられる確率は、かなり高くなります。

槍を持った相手が初打の手裏剣を避けたあとも、
すかさず槍先は自在に手裏剣側の動きを追ってきます。

また、槍をかわして、飛び込んで打てばいいなどとは、
単純には考えることは不可能です。
槍は、非常に長い距離を一瞬で「引く」ことが出来ますから、
下手な接近も全く出来ません。

そうした意味でも、もっとも平均的で数が多かった戦力であった、
槍、そして前回の刀という武器の前では、
手裏剣術というものの実力は、
(頭脳的な戦略と、個人の技量または、相手の弱さにも左右されますが)、
次のように考えられます。
　　　　↓

ただし、以下での「前提」は、
相手が「鎧」などはつけていない、という想定内の事です。
また、「相手は槍や刀だけ」であるという前提です。

【相手に構えが見えられているところからの対戦】では不利。

【手裏剣を隠して使う】ならば、有利かもしれない。

【構えていても、手裏剣側が2人のチームになれば確実にこれは有利】。

【両手打ちが出来ても、有利とは限らない。】

【当然、ただむやみに剣速を出せばいいというものではない。】

【かといって、剣速があまりにも落ちるような重い剣の使用は不利。】

【刀を持った相手には、手裏剣の存在をもしも知られていたら、
　掌剣術などは「ほとんど」無力。】

【多本打ちも、よほど上手く散らせないと効果が全くない。】

【相手には想定外の飛刀術系の類ならば、なんとかなる可能性もある】

【自分の側も、剣や槍を所持した上で手裏剣を使うことは有利か互角。】

【騙し打ちや、変化打ちや、トリッキーな打法も必要性が出てくる。】

【引き足での打法開発は、絶対に必要となる。】

【手裏剣単体を「構えた状態」から、槍や刀を相手にする方法は、
　瞬間的な発射の打法を使ったとしても、かなり「困難」なだけに、

　「手裏剣側が考える難問」としては、これは非常に面白いテーマで、
　それだけに、やりがいがあります。】

■ちなみに、項目のうちに「チームを組む攻撃法」というのがありますが、
中級手裏剣術でも執筆したように、
本当に、忍の集団というものが使ったとしたら、
絶対的に、この方法しかあり得ません。

そもそも、勝つことが目的である戦場では、卑怯も糞もありませんし、
一対一というルールもありません。
そして、失敗は許されず、
確実に結果を出さないとならない命令を、上からされているわけですから。

そうなると、より確実な方法の為には手段は選びません。
その場合には、2人の剣師で、1人の敵を襲うよりも、
2人(またはそれ以上の複数の者)のうちの1人が、
「もう1人とは別の角度から飛び道具を使う」ということは、
やられる側にとっては、これほど厄介で不利なことはありません。

ですから、本当に現実にもしも手裏剣が使われたとしたら、
そうした「援護射撃として非常に有効な使い方であった」だろうと
私個人は推測しています。

もっとも離れたところからであれば、小型の弓や、
その他の飛び道具や、分銅つき鎖鎌など、
「相手との距離の取れる武器」ならばなんでもいいわけでして、
これは手裏剣に限ったことではありません。

ただし、長い槍は、
秘武器として農具などにカムフラージュされたものでなければ、
決して使用されなかったと思います。
露骨に「はい槍ですよ」みたいな槍の類は忍びの世界で使われたかどうだかは
分かりません。

■そういうわけですから、私見では、
手裏剣を使った「立合い試合」の事実は、非常に少ないかほとんどない。

ただし、「チームプレイの中で使われた可能性」はかなりある、
ということです。

そして、その場合には、やられた側は、ほぼ死んでしまいますし、
忍びならば絶対に、現場に「証拠物」を残しませんので、
何らかの尖ったもので体の一部を刺されているという事以外には、
何でやられたのかは、後でその死体を見た人には分かりません。

そしてやった側は、それは「軍事戦略上の秘密」ですから、
忍たちは、そのことを自慢げに他言など絶対にしませんので、
武勇伝といった形には、なり得ません。

そうした出来事の結果として、
「人々の噂にも記録に残らずに」、
車剣や、棒手裏剣が使われた可能性ならば、
私は「充分にあるだろう」と考えています。
(この持論だけは、初版の著作から、ずっと変わりません)

●そして、江戸時代の剣術の人達の多くは、
わずかに方々に残っていた棒手裏剣の残骸や、
元々手裏剣を使っていた他流からの剣を何かのきっかけで入手して、
それを模した手裏剣を自分たちで作って、
自分たちの流派に、とり込んだのだろうと思っています。

■そして、
人が本当に斬り合いをした時代として、最後に残るのが「幕末」です。

しかし、既に銃も入ってきていたその時代に、
手裏剣のような、単体では不効率な武器が使われたのか、
それとも、やはり複数での襲撃のときになどに使われたのか、
それは、謎です。

　　　　　　　　　　　　　　　■

_______________________________________________________________

★ . 　　

[971]■ ■手裏剣は、現実には「ほとんど価値のない武器」だった■ 　by：鈴木崩残 　2007/11/01(Thu)15:53:52

【幻想と勘違いの中にいる人々】
手裏剣は本当に使われたのか「その1」

これは特に、海外の人に多いのですが、日本人ですらも同じ幻想の中で
お遊びをしているような人もいますので、釘を刺しておきます。

もともとこれは、海外の人への私信として書いたものです。

英文への翻訳用だったので、
文節を分解しているので、やや変な日本語になっていますが。

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　　　　　　●非常に重要な事実認識について●

棒手裏剣や車手裏剣は、実戦で使われた記録が「ほとんどありません」。

つまり、ほとんど「その戦績」や「実績(=勝績)」が残っていません。

人間を相手にして戦って、
手裏剣が勝ったという記録は4例ぐらいしかありません。

しかも「まぐれ当たりではないと推測されるもの」に至っては、もっと少ない。
さらには、手裏剣が惨敗した記録すらもあります。

つまり手裏剣は、日本の昔の戦争において、
単体では、武器として価値をほとんど持っていませんでした。

槍、弓、刀に比べれば、全く無価値だったのが事実なのです。

なぜならば、
もしも武器としての価値が手裏剣にあったのであれば、
もっと多くの戦争で「主力武器」として使われて、
必ずその歴史が残ります。
(他の武器の歴史や武勇伝が多く残ったように)

しかし、現実には、ほとんど何も歴史が残っていません。
つまり手裏剣単体だけでは、とても弱かった事を意味する。
これが手裏剣の「真実」です。

海外の皆さんばかりでなく、日本の人達でさえも手裏剣に対しては、
幻想を持っています。

その大きな原因は、人々が今までに見てきた、
「フィクションの映画や漫画」にあります。
欧米においては、ショーコスギ氏の忍者映画や、最近では、Narutoなどです。

忍術のほんのごく一部では、実際に使われましたが、
それは、威嚇目的や、剣との併用であったと推測されます。

しかし、
手裏剣やナイフ投げが、
本当に現代で武器や護身になりえるかどうか?
それを決めるのは、現代にいる皆さん自身です。

それは、実は、
皆さんが「これから未来に向かって決める」ことなのです。

それは、都合よく捏造された作り話や、
伝統や権威が決めるようなことではありません。

なぜなら、そもそも手裏剣術は、
対人で勝ったという「明確な歴史をほとんど持っていない」のですから。

吹き矢もこれと同じ理由で、現実に戦争で有効な武器であったと考えないでください。

　　　　　　ある任意の武器が本当に当時に有効だったか?

　　それは「その武器にまつわる歴史的に正しい記録」が
　　　　　「断片的にではなく、沢山残っているかどうか?」が、
　　　　　　　　　　判断基準になります。

だからこそ、剣や、弓や、鉄砲などには、
明確な戦績と「業績の記録」が複数残っているのです。

ところが、手裏剣にそれがほとんど残っていないということは、
すなわち、それは、
「主力武器になどなりえず、ほとんど価値がないと見なされた」
ということです。

もしも価値が認められていたのであれば、
それはもっと兵士の武器として普及したはずです。

しかし、たかが刺すまでの直打法の稽古に時間のかかるような、
そんなものを、「毎日が、明日も知れぬ戦いだった戦国時代」に、
チマチマと練習しているような者がいたら、
そんな者は、
ただの「暇人」か「見捨てられた、役立たずの兵士」です。

それ故に、刀の使用が制限されて、
手裏剣の稽古などに時間を費やしていられるような、
そんな「暇人」が多くなった泰平の時代に、
手裏剣術の流派があちこちに栄えたのかもしれません。

そして、現代における「さらなる暇人」である、私達もまた、
平和な時代であるからこそ、それを今、研究できているわけです。

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欧米の人の中には手裏剣を日本の伝統的な「武道」として考える人がいます。
しかしそれは間違いです。

日本以外の文化の人達が、手裏剣に関わるときに、
非常に注意しなければならないことがあります。

それは日本では伝統武術というものが非常に曖昧で「嘘が多い」ことです。

手裏剣に関して言えば、
剣術や合気道のほとんどが、近代になってから、
手裏剣を自分たちの体系の中に取り入れて創作したものに過ぎません。

日本では「徳川の統率」によって刀の使用が制限された
比較的平和な時代に手裏剣の流派の多くが発展した形跡もあります。

それゆえに、その体の動きは「剣術」に似たものになっています。
いわば、これは彼ら剣術家の「創作」によるものです。
つまり剣術の多くが、
もともとなかったのに、「あとから手裏剣を取り入れて模倣した痕跡」
が多くあります。

つまり元々はなかったのに、あたかも、昔から自流にあったかのように
捏造する人もいないとは限りません。

「これは、あとから取り入れて、自分たちの剣術に合成したものです」
と言うのであれば、全くそこには問題はありません。

しかし中には、元々はなかった「技や理論」を、
さも、昔からずっと伝承されていたものであるかのように、
捏造する、不誠実な者も現代の日本にいますので、充分に注意してください。
こうなると、それは「創作」などという綺麗な言葉で表現できるシロモノではなくて、
最早ただの「捏造=嘘つき」です。

一方で、もともと本当に約５００年以上前から存在した手裏剣は、
少ない数しか存在しません。
しかしごく一部を除いては、その正しい資料のほとんどが失われました。

信頼ができる、本当の昔の手裏剣の技は、
剣術流派の中にもあるにはありますが、
ただし、私達はそれに依存したり、それを盲信しても、
そこで、「これからの未来に価値を持つ事になるような」、
「技術的な向上」や「可能性の発見」が保証されているわけではありません。

既に語ったように、
もともと、手裏剣それ自体というものは武術としての意味を持っていません。
手裏剣単体だけでは、それは非常に「弱点の多い武器」なのです。

昔には、それは刃のついていない手裏剣での威嚇や、
時には暗殺の補助道具や、
「他の武器の補足的な武器」として使われた事もあると伝えられています。

また一対一ではなくて、
複数で1人の相手を殺すときに使われた可能性もあります。
つまり、それ自体は「対人武道」として成立しないのです。

ですから、「手裏剣はこうあるべき」という論議をする人たちは、
その時点で、既に論理上の「間違い」を犯しています。

私は手裏剣を武器というテーマの中で考えることもむろんありますが、
ほとんどの場合には「弓」の修業と似たもの、
または楽しむスポーツとして考えています。

私のスタンスは、多角的な「総合的な投擲」を競技や、
心の修業として楽しむ事です。

私は、手裏剣を、スポーツとして、競技として、対戦ゲームとして、
はたまた人々のストレス解消として、娯楽として、
あるいは精神的なものとして、
あるいは武術研究の一分野として、
などなど、多角的なその価値をすべて認めています。

だから、手裏剣を武術だけとしては考えないで下さい。

それは正しく伝わった伝統的や、きちんとした体系を沢山持つような
武術ではないのですから。

皆さんは、日本の「嘘の権威主義」に騙されることなく、
自由に、自分流のナイフ投げや手裏剣術を、独自に創作してください。

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私と私の友は、日本で手裏剣に関する多くの論議をしました。

そして現在における結論のひとつは、
手裏剣とその他の武術は分離して考えるべきであるというのが、
私の結論です。

すなわち、剣術や柔術や合気道の身体操作の論理と手裏剣の投擲は、
本来別のものであるということです。
一般には日本人でさえも、その点を誤解をしています。

手裏剣といえば、日本の剣術や、合気道や忍術に付随するものだと誤解しています。
彼らは「自分たちの術」の中でのみ、
手裏剣の扱い方を消化しようとしたために、
その結果として、たまたまその動きが、彼らの剣術などに「似てしまっただけ」です。

ところが、実際には、手裏剣における腕の操作と、剣の身体操作の間には
「大きな違い」があります。

その点に関しては私はＤＶＤの中で詳しく説明しました。

むろん私は日本の古典「と言われている」手裏剣術も興味深く見てきました。
それらもまた私の研究対象の一部です。

ただし私は実用性以外の面で「総合的な、直打投擲術という分野」を
研究しています。

小さな動きが必要となったり、
または、剣を投げた後の身体の操作についての問題が出てくるのは、
それは「対戦や殺人を前提とする場合」の論議です。

一方で、静止した物体の標的に正しく刺すという競技種目や、
どれだけ遠距離まで剣が届くかこそが前提となるような「競技種目」では、
そこでの理論と価値観は、実戦想定の論議とは、全く異なってきます。

ちょうどそれはオリンピックの競技である弓や槍投げと同じです。

それは過去の原型とその目的とは大きく違うものに変化しましたが、
しかし現代では、そこには「競技としての価値」があるということです。

伝統の手裏剣術にも可能性と欠点の両方があります。
現代の手裏剣術にも可能性と欠点の両方があります。

私を含む、ごく一部の日本の武術愛好者は、
「その両方の可能性」を、今、試行錯誤しています。

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[970]■ ■剣術　対　手裏剣の　試行錯誤の実験 　by：鈴木崩残 　2007/10/29(Mon)19:33:06

>■１０／３１　文末の「対戦シミュレーションによる対手裏剣術の考察」
＞へのリンクに、シリーズの「１～８」が本日の夜中以降に掲載されます。

>11/1 文中に「手裏剣側が、初打で勝負に出た場合」を追加しました。

【対戦シミュレーション】

http://www.youtube.com/watch?v=aOrjjicscPQ

【現時点での推論と今後の課題】

●まず、申し上げておかねばならないことは、
これは、今まできちんとした、試行錯誤が、
（例えば、一例としてスポーツ手裏剣普及協会以外では、）
ほとんど行われなかった、「対戦ゲーム」の記録です。

●使用したものは、鉄の芯をスポンジで包んだ模擬手裏剣ですが、
以前にも書きましたように、実際の直打の姿のままで飛びます。

顔面に当たると、当たる場所によっては痛い、あるいは、
目に当たると、怪我をする可能性の高い道具なものですから、
顔を狙うという約束をして行う場合には、
目だけは、安全の為にゴーグルをつけています。

動画中で一本だけ、大きな音を立てているのは、ゴーグルに模擬剣が
当たった時の音です。

●こうした状況に対して、どういった対処方法が、剣術側にはあるのか？
また逆に、手裏剣は「両手打ち」や、「変化打ち」が打てたからといって、
果たして、本当にそれが有利であると言えるのか？、
それともそうとは限らないのか？、
実際には、手裏剣が勝とうとしたらば、
どれぐらいの連続打剣の速度や、モーションの速度が必要となり、
身体の移動距離などは、どれぐらい必要になるのか？

といったことを、あーでもないこうでもないと、
考え、考えしながら、二名でテストしたものです。

●まず前提として明確にしておくべきことは、
我々は手裏剣、剣術共に、決して師範レベルではないということである。

従って、剣術側の有段者や経験者、あるいは手裏剣の有段者から見れば、
「このようにはならず、こうなるはすだ、
　いや、こっちが強い、いや、そうじゃない」といった、
ただの推測ばかりが、横行することになるでしょう。

●そこで皆さんにお勧めするのは、
「自分に都合のいい力量差」がある人ではなくて、
「自分と力が拮抗している相手」を実際に使って、
実際にこうしたシミュレーションを行ってみることです。

こればかりは、「いや実際には・・・のはず」などという
妄想などしている暇があったら、行動に移して、やるべきことなのである。

●そうすると、おそらくは、頭の中で妄想していたような、
手裏剣　対　剣術では、「剣術が強い」だの「手裏剣が勝てる」だの
そういう、妄想をゼロにして、まず思い込みから離れる事が出来ます。

すると、実は、どちらにも弱点も欠点もあり、
それらは、何十回、何百回と、実際に、
しかも、一方からではなく、多角的な角度からの検証を重ねないと、
断定はおろか「推論をする為の材料」すらも手に入らないという事が分かります。

●ちなみに、今回は、「一定のルール」を設けました。

例えば、手裏剣というものには、
次の３つの種類の「事の起こり」をどこに決めるかという、
「状況設定」があるとします。

１／そもそも手裏剣の存在自体を相手に知られないところから
　　事が開始するという「対戦の概念」。

２／ナイフや刀などを手にしているが、それがまさか投げられる
　　とは思っていない状況から開始するという「対戦の概念」。

３／はっきりと相手が手裏剣を持っていて、それを投げてくると
　　双方が認識しているところから事の起こりが始るとする「対戦の概念」

このうち、今回の実験は「３番目」に限定してあります。

従って、剣も手裏剣も、どちらも、
「構えたところから開始されているもの」も多くあります。

●この設定を通して感じた私の個人的な感想としては、

手裏剣が必ず有利であるなどとは断定して言えないこと。
また剣術もそれ単体で有利であると断定は出来ないこと。

今回のテストに関わった私達2人の共通した現時点での推論は、

「剣と手裏剣の併用」をうまく使うことによって、
相手に与える「心理的制圧の効果」と
「相手の戦法を制限してしまう効果」「相手に迷いを生む効果」が
非常に高いということです。

つまり、ある限定的な意味では、
剣と手裏剣を同時に構えることそのものが、
それだけで、相手の動きを制限する効力を持つということです。
これは、「実際にやってみないとわからないこと」なのでした。

■現時点の推論に過ぎませんが、
おそらくは、
手裏剣と併用したときに、
最も効率の良い金属製の武器は（火薬の使用などは仮定からは除外する）、
何らかの奇怪な「秘武器の類」ではなく、その扱いやすさから、
剣類（または日本刀）「であろう」という点です。

そういう意味では、
なるほど、剣術をやっている人達は、
「精密な身体操作の為に、どうの甲野」とか「剣術に還元されるから」
などという理屈によってではなくて、

　　　純粋に「対戦上の戦術」として考えた場合に、

　　　剣術に手裏剣を併用して使用するということは、
　　　ひとつの「学びのテーマ」として非常に有益であり、
　　　何よりも「感覚的に面白い経験」となることでしょう。

■また
「双方が、相手の構えと、相手の使用武器を認識している状態から、
そこから開始する対戦である場合」に限っては、
手裏剣の、本当の有効射程距離の「開始位置」というものは、
３間内外であることも、理解できます。
（作戦によっては、４間からフェイントをかけながら、
　距離を詰めてゆくことも出来そうですが、今回はやりませんでした。）

●そして、今後、無冥流で必要になるであろう技術とは、
手裏剣側は、横に動くのではなくて、
「後退しながら」間合いを外して、打剣できる技術もないと、
剣術には勝てない側面もあるだろうということです。

●私は良き友を得たおかげで、こうした実験を
今回は、非常に短い時間でしたが、行うことが出来ましたので、

今後は、この「対戦という状況下での必要性」から発生する、
今までにない、新しい打法を開発してゆくつもりです。

　　　　　　　　　　　　　　●

■この試行錯誤は、無冥流においては、今ようやく始ったばかりであり、
今回の動画は、ひとつの「問題提起」であり、
「課題だけを、ちょっとディスプレイしてみたというだけ」
のものに過ぎません。

【武勇伝を疑う頭を持て】

■たとえば、私の方も最初のうちは、わざと、
いつもの稽古の時のような速度でやってみています。
それでは間に合わないという状況を認識してみてから、

少しずつモーションを瞬発打法に切り替えたり、下手打ちを使ってみたり、
調整をして行っているのが分かると思います。

まさにこれが、もしも本当の殺し合いの勝負だったら、
こうした細かい検証と、段階を経た考察が出来ないままに
「たまたま、そのときに勝運のあった方」が勝ってしまうので、
術理としての体系化できないわけです。

そんな、詳細な記録も曖昧な、一度きりの勝負をもってして、
どこの流派が強いだの、弱いだのは、言うべきではないという事です。

もしも本当に「流派」を賭けて戦いたいという人がいるならば、

>その流派20人　対　別の流派20で、「段数の拮抗した者同士」を、
>順番に戦わせてみた、その結果でしか、
>「流派の看板」は「賭けの対象」とはならないと認識すべきです。
つまり、対戦する人の組み合わせが変わると結果が変わるということです。

●「都合のいい、一回きりの武勇伝」だけ並べ立てたようなもの、つまり
だらしなく、体系化もできていないままに残されてしまった伝承といったものは、
「反復性や普遍性を持たないままに、勝手な嘘や、
　あとから付け足した捏造」を含む伝承、となってゆく事が、
非常に多くあるので、武術マニアの人たちは、
よくよく「自分の頭」でしっかりと考えて、注意をする事です。

●さて、このような参考程度の画像を見たそのあとは、
それぞれに皆さんが、
同じような、あるいは、違う武具を使ったさまざまなテストをしていって、
悩みながら、考えながら、「どうしたらいいのか？」を、

決して、自分に都合のいい性急な結論を出すことのないように注意し、
また、たった一度きりの実験でたまたま出たような、
都合のいい結論にしがみつくといった愚かなことを決してせずに、

何度も何度も、自分の頭で疑っては、やってみて、
検証しながら、道を歩んで行ってください。

【初打の一打で決める方法】

ここで、あえて、逆に「手裏剣を有利に働かせる方法」を言えば、
次のような手が考えられます。

今回は3間か2間距離から、間合いを警戒しながら、
初打はフェイントの捨て剣として、
第二打で決めようとする傾向が私にありました。

剣術はどういう戦略を持っているのかを何度も見て知る必要もあったので
自分から攻撃を仕掛けるよりも、観て学ぶ側になってみました。

しかし、もしも相手の武器が「剣か棒類だけ」なのであれば、

手裏剣側が構えたままで、
積極的に、自分から間合いを剣術側に詰めてゆき、

剣術が間合いを詰めてきたり、何かの動きや攻撃に入る直前に、
1間前後から、一本の手裏剣だけで決着をつけようとする方法もあります。

これは今回は試さなかったのですが、
剣を突いてくる速度や振ってくる速度と比較したときに、
もしも、剣や武器が届かないぎりぎりの接近距離からであれば、
もしかすると、手裏剣の方が一瞬だけ速く、標的に到達する「かも」
しれません。

ただし、その場合の最大の注意点は、
もしも「本当の実戦」を頭の中で想定しているのであれば、
相手はたとえ手裏剣が刺さったままでも、
もしも剣を振りに入っていたら、慣性がついているので、
そのまま剣を振ってくるだろうというのが現実です。

あるいはまた、刺さりが浅くて、余力が残っていれば、
反撃を食らって、斬られてしまいます。

従って、あまり接近した距離まで飛び込もうとするのは危険です。
剣が振りきられたと想定した場合でも、剣がぎりぎり到達しない距離で
打剣後のモーションが終了している必要があります。

これは次回に、
他の戦略ともあわせて、ぜひ、試してみたいと思いました。

●それと、木の標的を揺らして刺す稽古をしていたので、
最初から、分かりきったことでしたが、

稽古の上では、静止した小さな標的を狙うことは大きな意味がありますが、
実際に、予測不可能に動く相手の顔面や、動く相手の「足(袴の中の足)」を正確に狙う、
という考えは、むやみに実戦主義者を自称する者は、
捨てた方がいいかもしれないということです。

そうした打剣は「ひとり妄想」の中では可能でも、事実上は不可能です。

つまり、フェイントとしては顔面狙いや、足狙いは、効果絶大でも、
「決めにかかる」のだとしたら、狙いは胴体と考えた方がいいです。
ただし、手裏剣を隠した状態からの「不意打ち」を対戦概念の中に含むならば、
「話は全く別」になってきます。

★ちなみに、動画の最後で、思わず2人して笑っているのは、
空中で、綺麗に、両方が一直線上にならぶ形で、
手裏剣が相打ちになったからです。
同じような軌道上に、同時に投げたわけですね。
この偶然は、記憶違いでなければ、今回、２度ほど起きました。

先端が尖った実際の手裏剣では、双方の剣の「側面」が当たるならばともかく、
先端同士が当たるなどということは、ほぼ絶対にあり得ない現象ですが、
模擬手裏剣だったために起きた、「おかしな偶然」でした。

　　　　　　　　　　　　　　　●

なお、今回、対戦ゲームの試行錯誤をして下さった市村氏が、
剣術の側の視点から、独自のレポートを掲載していますので、
下記のＵＲＬをチェックしてみてください。
　　　↓

対戦シミュレーションによる対手裏剣術の考察（１～８）
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/phantom1868/

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[969]■ ●テスト投稿・・・ごく日常の稽古風景● 　by：崩残　2007/10/21(Sun)20:11:16

「中級手裏剣術」のレビューを戴きました

■下記のブログにて、御評価を戴きました。
　　　　　　↓
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/phantom1868/

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

●これは、デモンストレーション抜きの、
　地味な、ごく日常の練習風景です●

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[968]■ ●「スポーツ武術」の世界 　by：崩残　2007/10/18(Thu)16:43:20

>１０／２０　ナイフについての説明と動画を１２：００に冒頭に更新。
>17:50 韓国の武術家の人の技を、少しだけ真似た打法をやってみて、
>その感想をアップしました。

スローイングナイフの威力

■字幕で説明していますが、現在、欧米の多くのスローイングナイフが、
刃をわざと甘くしてあるのは、
反転打の手の内で持つことも想定されているためです。
（ただし中には、「１回転、２回転が専門の人」もいますが。）

■もうひとつの理由は、ナイフスローは現在「カジュアルなスポーツ」
として普及しているために、実用性はあえて、追及していないことです。
スポーツ競技としてですから、刺さればいいという最低限の構造になっていますし、
また、刃と刃が当たることも多いですから、メンテナンスの点からも、
普通のナイフのような刃はつけないわけです。

■しかし、それらの「制限」を全く変えてしまうのが、
直打法（正しくは、四分の一以下の回転による打法）であり、
そのことが欧米で普及した時には、
武器としてのスローイングナイフに刃付けをしないといった制限をする
必要が全くなくなります。

そして、少し前の投稿でも書きましたが、直打法による最強の投擲武器とは、
大型のナイフ系の武器、あるいは、「直刀」の小刀などです。
（剣身に「反り」があると、空中でのバランスが極端に崩れやすいのです）

ある意味ではナイフの方が平面的ですから、
シースなどに収まり、工夫すれば携帯性も良い面もあります。

■私個人は、趣味として手離剣も好きですから、
今後も、自分個人としては、和式の「スパイク手離剣」を投げ続けては
ゆきますが、
ただし、欧米の人に対しては、彼ら自身の文化と歴史の中に長く存在している
ナイフを薦め、手裏剣の使用を推奨することはないと思います。
（「学習用の用途」以外には。）

実用性から見ても、ナイフの方が単体で武器または「道具」となり、
かつ投げられるという利点もありますし、威力も文句ありません。

あらゆる点で、武器や道具として条件を満たしているという点では、
用途が限定された手裏剣よりも優れていることは明らかです。

ただし、これは武器や道具としての「価値基準」に制限をして
語った場合の話です。

私個人は、手離剣、または棒状という形状には、
まだまだ魅力と可能性を感じていますので、
これからも、もっともっと、さらに研究を続けてゆくことになると思います。

●なお、動画中の私のナイフは110g、
ひさびさに投げた、かなりの軽量小型剣は、65g。
次の動画のパンチ打法で使ったのは、93gの剣でした。

　　　　　　　　　　　　　　●

パンチ打法？（親指滑走？）

無冥流には「突き打法」という特殊な打法があるので、それとは
分類上、まったく異なるので、区別するために仮名を「パンチ打法」とでも
しておきました。

●片手に２本を保持して、連続的に投げることも真似てみました。

しかし、はっきり言って、慣れるまでに時間がかかる上に、
腕の動きが普通の投剣動作とは「かなり異質」なので、
今までせっかく体で学習した感覚が混乱してしまう可能性もあるものですから、
下手に真似しない方がいいかもしれません。
でも「この打法だけを極めてやろう！」という人ならば、話は別ですが。

■また、動画の中では、この投法を、私が少し間違ってしまっています。
正しくは、発射の瞬間に「人差し指を伸ばした時に」、
その指の面を剣の側面が滑って飛び出させる、というのが、正しいやり方です。

●最後は、かなり久しぶりの「軽量剣」だったのですが、
やはり、２００グラム内外のを投げている時のゆっくりしたモーションの
癖が、軽量剣でも露骨に出てしまう癖が私にはあるので、
意図的に、頭と感覚を「軽量剣路線」に切り替えてみました。

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東洋武術の変容

■日本の古流とかそういうものを超えて、
または、中国武術ともまた違う形に
姿を変えた「マーシャルアーツ」というものが欧米にはあります。

数十年前までは、最初は、
単に日本や中国の武術を模倣していた欧米の人達は、
現在では、独自の形を作りつつあります。

これを日本の古い世代の人達や、古流にしがみつく人達は、
単にショーアップされた「アクション」や「アクロバット」である、
と言いたい狭い視野の人も、いるようですが、

ところが、こうしたその国の独自の「文化フィルター」にかけられる
という経緯をたどると、その中に今までになかった
技が生まれることが多々あります。

欧米の人達が、いったん何かを吸収して、それも、元国に媚びたり、
妙に卑屈にならずに、彼ららしく突っ走ると、
結局のところは、発想のダイナミックさや実行力では、
東洋の人達というのは、負けることが多いと知っておくといいです。

それは、簡単に言ってしまえば、文化や遺伝子の違いからくる、
「人間性能」としての違いです。

●何事にも二面があるように、
東西には、それぞれの「良さと悪さ」がありますが、
現代では、ろくな精神性もない日本の武道家たちに対して、
神話じみた妄想を持つ時代は、終わりつつあります。

私が接した範囲では、人にもよりますが、
パーセンテージから言えば、欧米の人の方がよっぽど、内省的であり、
人間としても基本が出来ています。

むろん集団になったり、狂信的になれば、どこの文化の人間でも
トチ狂うことになるのですが、

少なくとも、常に「嘘つきと偽善者」が幅を利かせてきた、
「湿っぽく」「引きこもりがち」で「誤魔化すことばかりしてきた」
日本の土壌とは大違いです。

そういう目で、こうした演技を見ると、彼らが彼ららしい道を作り出したときには、
もはや、東洋の模倣など不要のものとなるのであり、

また、日本や中国などの東洋で、本当の精神性などに口を出せるような
宗家や師範など、１０万人に1人以下だと断言できます。

実際、私が「個人的に知っている範囲」の話ですが、
日本に来日しては、教室を開いている中国拳法の継承者と名打っている
本場の老師などにも、非常識で、本当にしょーもない「馬鹿老師」も多いようです。

竹の間的に言えば、チンジャオロースならぬ、
「死んじゃおローシ」を食った方がいい人達です。

■あと３年もすれば、
日本の手裏剣術の看板を名乗っているような人たちには、
とても馬鹿に出来ないような斬新で、
考えてもみなかったような技や剣で、「かつ実用的なもの」が、
どんどんと彼らによって生み出されると私は予測しています。

単にショーアップされているのではない技、
単なるアクロバットではない技が、
もう、既に、あちこちで生まれつつあるということです。

■たとえば、剣術や空手やカンフー、弓道、
こういったものに憧れた欧米の人達が。
わざわざ、東洋に出向いて習ってきた「時期」があります。

しかし、こと手裏剣術に限っては、
わざわざ、欧米の人が頭を下げてまで入るべき流派などないですし、

とてもではないですが、お勧め出来るような門も、
人格的に調った師範も、ご存知のように、日本には「皆無」であり、
また、お勧めできるような論理体系も、
全く日本にはひとつもありません。

●なにしろ、彼らは単に、いままで回転打で投げていたナイフを、
ただ単に「スピンさせない」という技術を学べばいいのであり、
くだらない武術理論やら、精神性やら、古流など彼らには全く必要ありません。
歴史的に見れば、彼らのナイフスローの方が歴史があるのですから。

従って、
>何ひとつ彼らの身体能力や、身体の骨格や、芸術的なセンスを損なうことなく、
>決して、日本の手裏剣術など、押し付けることなく、
>ただただ、
>「ナイフをどうやって直打で投げるか」だけを私は示唆し続けています。

そのために、日本の手裏剣の門など叩く必要は全くありませんし、
そんな価値のある門はほとんどありません。

唯一、私が個人的に薦められるとしたら、八角流だけですが、
ただし、今度は、それはそれで、
半田師範の体系論理は、あまりにも欧米の人には繊細で複雑すぎて、
欧米の人には理解不可能なものになってしまうように私には思えます。

何しろ、直系お弟子さんですらも、その全ては理解できていないようですし、
むろん、門外の私に至っては、まだ会得して理解はできない部分が、
本当に多々ありますから。

■私は自国の伝統と名づけられている手裏剣術を否定する気はありませんが、
ただし、直打法は何も「日本の専売特許ではない」という「事実」があることと、

そして、欧米の人が直打法を学ぶのに、
日本の伝統的な手裏剣術に頼ったり、依存したり、入門する必要なども
何ひとつもないという事実である。

欧米の人たちが、直打を習うには日本の手裏剣を学ばねば、などと、
まるで手裏剣術が、直打法の世界への「登竜門」や「必修過程」でもあるかのような、
そのような、「とんだ勘違い」を決してしないように、
私は、欧米の人たちには、
「ナイフスローにおける直打法」を学ぶように常に言っています。

　　　　　　　　　　　　　★★★★★

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■ということで、前振りが長くなりましたが、
文字どおり、「欧米化」した、「アメリカン武術」のいろいろな側面を
見ることの出来る、コンテストや、技術指導の映像郡です。

ヌンチャクなども、沖縄のものや、中国の少林拳とも違う形に
アレンジされているのが分かると思います。

具体的な需要としては、ハリウッド映画などでのアクションとなるものも
多いですが、見る目のある人ならば、
「決して、それだけには留まらない」ということが、細かい技を見るとすぐに
理解できるはずです。

■最後は、ちびっ子の演武ですが、
いくら競技用の軽い棒だとはいえ、スピードがとにかく「速い」です。

■最後は、私が、その動きがとても好きな日本の武術家の岡林氏です。
この人の動きの気配は、他の名の知れた人達のものよりも、
私は「個人的」には、ずっと好きです。

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[967]■ ●手裏剣術の大百科事典■「現代手裏剣術の集大成」が書籍に 　by：鈴木崩残 　2007/10/16(Tue)08:01:49

【本とDVDの発売を開始しました】

★「中級手裏剣術」の第三版の改訂版と、DVDが同時発売です。

【加筆されて362頁に】

判型が、B5サイズになりましたので、携帯性は悪くなりましたが、
書棚にあると、なんとも「迫力」があります。

もともと、人間が、文章というものを、頭に吸収する為には、
流し読みをするようなネット上の散文ではなくて、

しっかりと紙に印刷されて「物質化した書籍が良い」という持論が、
昔からずっとありますので、
仮にネット上と重複する内容があったとしても、
私は常に本の形にするようにしています。

【入手できる書店さん】
　　　●全て通販が可能です●

すでに、本やDVDが納品されている書店様。

★【コンクリート】
http://blog.livedoor.jp/taiyo_planet52724152/

ご注文は、こちらから↓
http://www.taiyo-planet.co.jp/konc/order.shtml

★【リバートップ】
http://www.rivertop.ne.jp/rivertopsabu/nif/book22.html

以下の書店は、本日16日の午後には納品されます。

★【ブックばざーる】
http://bookbazar.biz/mumyo/hozan.htm

＞★南青山の『ブッククラブ回』
Tel :03-3403-6177 Fax: 03-3403-9849
E-mail : shop@bookclubkai.jp

＞★神保町の『書泉グランデ４Ｆ』

「2階の武術コーナー」の担当者の方にお問い合わせください。
TEL:03-3295-0011 FAX:03-3295-0019

【手裏剣の注文について】

●来年からは、
手裏剣の注文の受付を、極端に制限することにしましたので、
今までのように、皆さんからの注文を松の間で、
受け付けることはしなくなります。

今回の書籍の中には、皆さんが直接に、金属加工の工場に
発注できるような「FAX用紙」と、工場のFAX番号を書いておきましたので、
各自で、直接に、安く手裏剣を作ってもらえるようにしました。

またどうしても私の手によって微調整や糸で固めるなどの
付属品を施した剣を必要とされる方には、
唯一、下記の【武学倶楽部】の市村氏を通じて、配布いたしますが、
ただし、稽古会に定期的に参加される、手裏剣を実際に行う会員のみに
限定させて戴きます。その場合には価格はかなり落とせます。

★【武学倶楽部】★の頁はこちら
↓
http://www.bugaku-club.com/

●それ以外の方は、今回の「第三版の中級手裏剣術」を買われて、
自分で発注するのが一番いい方法で、安上がりで、しかも、
>手作業では困難で時間のかかる「穴あき剣」や、「精密で均一の加工」
>を発注する事が出来ます。
>むろん、無冥流の剣だけではなく、皆さんが自由に設計した
>「自分だけの剣」を、工場に注文することが出来ます。

店頭などで買いますと、礼儀としても、また社会常識としても、
お店に売値の4割以上を払うのが一般的ですから、
どうしても原価というわけにはいかず、高くなってしまいます。

(書籍の場合には、通常「3割」が書店さんの取り分ですが、
こうした物品の場合には、定価の4割から半額がお店の手数料になります。)

【入門編のDVDについて】

●これにつきましては、既に多くの方より、大変によく出来ている、
分かりやすい、構成が良い、今までの市場にあった手裏剣のビデオやDVDは、
実際にどうしたらいいのかが不親切だったが、
このDVDは、限りなく親切で、最も重要で役立つ「要点だけ」が凝縮されている、
といった好評を戴きました。
皆様からの感想は、下記のログをご参照ください。
　　　　　↓
http://www.mumyouan.com/k/?M960

【第三版の特徴】

むろん、第二版に大きく「加筆」という形ですので、第二版と同じ部分もあります。

手にしてみますと、とうとう、趣味がどんどん暴走して、
現代手裏剣術の、国内初の「集大成の辞典」を作ってしまったようだ、
といった、大迫力の出来上がりになっています。

ご存知のように、第二版からは、バッサリとすべて削除した他流に関係する
名称や記述もありますので、

完全に、無冥流の「オリジナルの理論と方法論」のみの集大成で
構成されています。

今回加筆された部分は130頁以上もありますが、
私から、客観的に観ましても、非常に良い出来となりまして、
この加筆した部分によって、「中級手裏剣術」の「本当の本質」と
面白さと、今までの手裏剣術には全くなかった独自性が、
皆さんの魂の奥底にまで、深く伝わると確信しております。

既に、皆さんが、知っている原稿も多くあると思いますが、
今一度、PCの電源を切って、
静かで、くつろいだ環境で、本書を開いて、
その不思議な手裏剣術の「世界地図」を旅してください。

本書を、「世界中の」全ての「直打法愛好家」の人々に捧げます。

　　　　　　　　　　　　　　　●

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[966]■ ●投擲術・最新ニュース 　by：崩残　2007/10/13(Sat)01:23:49

Wu老師の直進飛剣の速報

お馴染みの「台湾の老師」は、18メートル以上の距離を、
短槍で、真っ直ぐに飛ばすことに成功しています。
角度は約30度という事ですが、素晴らしい記録です。

使っている槍は、
長さは約50cm 重さは約300gで、太さ10mm以上です。
しかし、いろいろと日々、まだまだ改良を重ねているようです。

【↓このログの投稿に、その槍を真っ直ぐに投げる映像があります】

http://www.mumyouan.com/k/?M946

次の映像は「速投げ」です。

モーションの速さが半端ではありません。

書籍の印刷が出来ました。

やはり、B5サイズは、いい感じで「でかい」です。ずっしりきます。
しかし、そうしたおかげで、綴じの部分が安心して、開けます。

今日は、海外への発送が11冊ほどあったので、
バタバタしていて大変でしたが、
ぎりぎりで、夕方の集荷に間に合いました。

★目次や、明日か明後日に、納品される予定の書店は、
追って、この掲示板で、お知らせします。

●さて、うちの「箱入り息子」の、博士君。

　　　　　　　　　猫がらみ、ということで、

今回も、最後は、好例の「お笑い」で、締めくくりましょう。

　　　　　　★大　爆　笑　の　3　連　発　で　す!!!★

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[965]■ もしも最強の「投擲用の剣」と言うのであれば、それは【欧米のナイフ】である。 　by：鈴木崩残 　2007/10/12(Fri)06:17:53

スローイングナイフの平均的大きさ

●知人から、海外のナイフをプレゼントされたのですが、
直打法で投げるのに、非常にバランスがよく、
手にして初めて投げて、3本とも全部、3間から刺さりました。

屋外でテストをしてみますが、おそらくは、このうちの少なくとも
一種類は、6間ぐらいは軽く行くように予測しています。

●ところで、以前に小型軽量剣主義の人が、剣の長さの定義について
からんできたという話をしましたが、

ここ以外にも、沢山のナイフ通販サイトが海外にありますが、
平均的な大きさというのは、だいたい25cm前後から30cm以上あります。
↓
http://www.throwzini.com/store.html

このボビーさんが手にしているナイフというのが、
彼らの国内競技でも、平均的に使われている大きさです。
↓
http://www.combatknifethrowing.com/index.php?option=com_content&task=view&id=3&Itemid=4

●日本だけで通用している手裏剣という狭いカテゴライズを
とっぱらってしまえば、日本のほとんどの棒手裏剣は、
ダーツまたは、スパイクと呼ばれてしまう分類に入ります。

一方で、仮にですが、もしも「直打法愛好会」なるものが、アメリカなどに
出来た場合に、
ちょうどボクシングのように、ヘビー級とか、何何級といった
カテゴライズを、剣の長さで分類しようとした場合には、
18cm程度で、小型ではないなどと言っていたら、とてもじゃないですが、
欧米のナイフ全体をカバーし切れません。

彼らは日頃から、400ｇ、500gといったナイフや斧を平気で日常的に投げて
いるのですから。

●従って、
日本という狭い世界で、手裏剣がどうのこうのと言っている分には、
「その中でしか通用しない長さや重さの基準」を対外的に、国内だけで
言っていればいいでしょうが、

舞台が世界という場に変われば、
すくなとも、次のように、
競技で使われるナイフや道具を分類しなければならない必要を、
私は感じている。

●「重さ」や、「重心の位置」で、
総括的に、いろいろな種類の剣を分類してみるという試みは、
今までに既に何度かの定義変更をしつつ、完成しましたが、

「長さ」で剣を分類するという基準は、明確にはしたことはありません。

仮にそれを明確化すると、私の個人的な意見では次のように区分が決まります。

>20ｃｍ以下・・・・・こららは一括して「ショート」クラス。

>20ｃｍから30cm・・・ミドル、

>30cm以上・・・・・・ロング、

つまり、これぐらいの大きな幅を持つ「分類枠」でなければ、
とてもじゃないですが、欧米のナイフ類を「包含」することは出来ません。

●半田師範とも、つい最近、話をしたのですが、
師範曰く「ナイフは怖いですねー」。

なにしろ、400gとか、500gの重さで、
しかも、先端だけではなくて、
その全体に渡って、両刃で刃がついているものも多くありますから、
当たると切れる面積が、手裏剣とは、全く「大違い」です。

もしも投擲武器として考えた場合に、
そして仮に射程距離を、「実用性の限界あたりの、5間前後」に
限定した場合には、
バランスのいいスローイングナイフに勝るものは、
今のところ、どこにもありません。

●今のところ、ナイフスローの「直打法」というのはごく一部でしか
行われていませんが、
これが、今後、私達の普及によって、「世界的なものになった場合」には、
その到達距離も、いままでとは、大きく違ったものになり、

彼らの文化圏にあった、その最強のスローイングナイフで、
10間投げなど、簡単にやってのけてしまう人達が、
あとたったの数年すれば、大勢出てきます。

自然に出てくるというよりは、私が必ずそうしてみせます。

■つまり、300g前後程度で、超重量剣だ、とか言っていたり、
25cmで「すごく長い剣だ」などと言っているような、
そんな「ちっぽけな世界」ではないのです。

●今までは、欧米では、直打法が普及していなかったために、
反転打や、回転投げには、その投げ方の性質が生み出す
独特の「制限」がありましたが、

今後は、その到達距離や、変化打ちの種類、
そして威力、貫通力、殺傷力においても、
欧米の人達は、何の制限もなしに、全く「自由に」それらを作りますし、
日本人よりも徹底して先駆的で、行動力がありますから、

とんでもない大きさや、威力や、とんでもなくユニークな形状のものが、
彼らの手で作られ、投げられることになると私は推測しています。

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[964]■ ●手裏剣を薄暗い中で投げる。対戦想定のためのトレーニング・ツール。 　by：鈴木崩残 　2007/10/09(Tue)06:10:15

薄暗い中での打剣と、対戦トレーニングツール

ほとんど動画の中で、しゃべっているか、または字幕で説明してあります。

●補足して書いておきますと、これは、
逆光の中で標的を見ると、距離感が狂うという一般的な現象に、
少しですが似ています。

よく海外で見かける、オレンジ色の水銀灯などの照明も、
目が慣れないと、距離感が、かなり狂うでしょうね。

●撮影した画面では、周囲は明るそうに見えていますが、
実際の目視では、畳の輪郭がかろうじて見えるぐらいです。
ただし、中央の白いマットの部分は、なんとか見えています。

●最後の部分の言葉が、聞き取りにくいと思いますが、
要するに、暗くなると、
日頃「視覚と連携協力をしつつ、学習をしてきた打剣感覚」が、
少しずつ役に立たなくなってきます。

そうなると、暗さや、慣れない光源や、逆光による目の錯覚を無視して、
いつも「体で覚えている投剣感覚」で投げないと、刺中しないのです。

まだほとんど屋外で、これをやったことがないので(室内の闇打ちはよくやります)、
練習すればすぐに慣れると思います。

現段階では、刺さるには刺さりますが、
30%以上、いつもよりも刺中率が下がってしまうようです。

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さて、

■前回の投稿の「スピードガンによる計測」についですが、
市村氏は、予想外で、愕然としたと書いていましたが、

私の場合には、その前段階で、110gのおもちゃのボールの速度を
計測していたので、
まさか、10キロ以上も落ちるとは思っていませんでしたので、
感じたショックの種類がまた少し違っていました。

しかし考えてみれば、棒状の物体を直打で投げるというのは、
ボールを手で安定させて投げるのとは違うわけですから、
そうそう、もともと投げるために作られたボールと同じ速度が出るはずもないわけですね。

●あとは、こうした機械測定において、大切な点は、次のことです。

むやみに、軽率に何かを誇張するあまり、計測ミスをしたり、
また、計測せずに希望的観測で時速を口にする、などの
いいかげんな行為に対して、
「事実は違う」と明確に指摘することも大切なことですが、

こうしたことにおいて、最も大切なこととは、
「その数値の事実を、その人間が、どう受け止めるか」です。

●つまり、私が市村氏の「武ログ」のメッセージボードで、提案をしたように、
こうした計測結果を、逆に、自分の稽古のために利用することが大切なことです。

せっかく正しい数値を示してくれる機械なのですから、
アホウで、目の狂った師範に、
「今の剣は遅かったぞ」とか、いいがかりや文句を言われることもなく、
機械の方が正しく結果を示してくれます。

その数値を頼りにして、どこをどう工夫すると、剣が本当に速くなるかを
実験し、試行錯誤できるわけです。

ただ計測して、その数値を誇示したり、またはどこかで言われていた、
希望的な想像上の時速を、嘘であると否定するためだけに使っているのでは、
「創造的」ではありません。

何であれ、すべての情報やツールを、
自分たち自身に利するように、
「使いこなすこと」と、「使えるように創意工夫をすること」が、
もっとも大切なことなのです。

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●それと、おまけですが、最近、自分のお気に入りにいれた、
YOU=TUBEからのコレクションの一部です。

もっとのどかな風景とかも、集めていて、
別にこういうのばかり、コレクションしているのではありませんが、
いちおう、松の間は、手裏剣系なものですから。
　↓