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>【現時点で、私が考え得る「最高の剣」】


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★ . 　　

■前回、根岸流の手裏剣の形状差についてコメントしたあとで、
もう一度、ビデオを何十回と停止画面で見ましたが、
現時点では、前田師範の剣と、斎藤師範の剣の、
確実に違うと明確にいえるポイントが、
画像からは、なかなか確認できませんでした。

本体の剣身の形と、糸の巻き方が、微妙に違うとも「見える」のですが、
画像が不鮮明なこともあり、確認不可能でした。
ほぼ、同一の剣と言えるのかもしれません。



■ただ、今回、画像を確認していて、「たまげたこと」があります。
それは、おおよその、予想はしていたのですが、
初回に何度か見たときには、確認が出来ませんでした。
(当時の私のテレビが、かなりのポンコツで画質が悪かったせいのようです)


ところが、昭和62年に、前田師範が、演武をされている剣の
飛行状態に、私は、「にやり」としました。


それは、しかも、NHKで、放映された、前田師範の、
「最初の打剣」だけにしか、映っていません。


その剣は、手離れの瞬間から、前に「約40度前後も傾いており」、
なんと、的と打剣位置の、「ほぼ中央付近」では、
すでに「剣先が完全に前をむいて」、
そのまま直進して、刺さっているのです。

画像は、かなり不鮮明ですが、それに続く2打目、3打目も、
剣は、確実に、斜め前に傾いて、発射されているように見えます。

打剣の特徴としては、肘から手首にかけては、
テイクバックが、ほとんど後ろに傾かずに打っています。

この点は、現存するほとんどの手裏剣術の打法と異なります。
この動きは、単に、ご高齢であったから、動きがコンパクトであった、
というだけの理由ではないと、私には、思われます。


距離は推測では、3間から4間以内だと思いますが、
この距離で、剣をあのように、発射の瞬間からすでに斜め前に傾き、
中間地点では、すでに完全に剣先が前を向いたそのままで、
直線的に飛ばしている様子は、市販されている、
斎藤師範や苫米地師範のビデオ画像には、一切ありません。
むろん、甲野氏の剣の飛跡とも全く違います。

ここから推測されることは、
もしも前田師範の使っていた「剣そのものが異なる」のでなければ、
打法が違うということです。

それも「真鋭流の足の運び」の部分ではなく、
手の振り方そのものが根本的に、違うということです。

ただし、この様子は、本当に、一番最初の打剣を
コマ送りにしてみないと、わからないです。

お手元に、NHKで甲野氏が出演していたときに放映された、
ホームビデオで撮られたと思われる、前田師範の
「一番最初の打剣」の剣の角度すべてを、コマ送りで、
目を皿のようにして、見てみることです。
不鮮明ですが、剣尾の色が違うので、剣の角度の確認が出来るはずです。


どうして、あのように剣が飛ぶのか、
それは「中級手裏剣術」である程度の解説はしていますが、
あそこまで極端に前傾した剣を打つには、
また別の手の操作が必要になる。

これについては、
前田勇師範のお弟子さんの寺坂氏が、
初心者の頃、直打法で剣が回転しないようにと、
剣をハタクようにして「抑える動き」をしていたのを前田師範から、
「それは壁塗りじゃ」と言われたという点も、ひとつのヒントとなるだろう。

ただし、前田師範の打法は、スナップ打法ではありません。


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>更新・追加事項

房と箸の長さを変えて打剣。
結果は、想像するまでもないことでした。
　　　　　↓
　　

房は、紐8本なら、5ｃｍで十分である。

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★ . 　　

>■8/1-9:03更新


　　　　■【本当に、「体で打つ」ということ】■


口だけで、「体を使って打つんだ」とか、
肩と手の力を抜いて、腰で打つんだ、などと、いくら
身体に言い聞かせたところで、決して体はそのようには動かず、
多かれ少なかれ、腕の振り回しや、スナップで手裏剣を打っています。

ところが、一瞬にして、それが全く不可能となり、
身体や、特に腰の回転を使わずには、ほとんど手裏剣が
打てなくなってしまう方法があります。

その方法はこれです。
↓


■どういうことかというと、テイクバックのときに、
手首を反らせることが出来ないように、
軽い板を手首に巻きつけてしまうのです。

「なんだ、そんなことぐらいで、変わりはしない」と、言う人は、
実際に、板を固定して打剣すれば、頭が「真っ青」になりますよ。

普通の手裏剣術が、いかに手首を反らせるという運動に、
どっぷりと頼っていたかがわかります。

逆に言うと、この手首の反りが禁止されるこの状態で
剣をまともに標的に打ち込める唯一の方法は、
腰の動きを上手く腕に伝達することのみです。

これを実際にやれば、【本当に体で剣を打つ】ということが、
どういうことなのかが、
理屈ゼロで、感覚で、はっきりと、わかりますから。



■ちなみに、これは無冥流で採用している、
「直進打法の特訓用の奥義」です。

とはいえ、やれ奥義だの、流儀の根幹にかかわる稽古法だとか、
なんて、もったいぶるような家風は、さらさらないので、
こうして公表してますので、

手裏剣愛好家の方は、この方法で打剣するには、
何を身体が学習すべきか、体感してみることです。

たとえば、「腰をうねらせないんだ」とか言って打剣している人も、
思いっきり、手首に「溜め」を作りまくって、
「手首を、うねらせていたんだ」と証明されますから。

逆に言うと、この制限された手首の状態で打剣できるようになる
ということは、本当に身体を有効に使えるようになってきた、
という事であると同時に、
剣を滑走させない、スナップを効かせない、腰で打つという方法を
会得できるようになるということです。


■前記の写真では、前方向の手首の運動も阻害しているように
テープの巻き方が見えていますが、これは上級者用の阻害方法なので、
初心者の人は、とりあえず、前方向への動きだけを阻害しないように
くくりつけるテープは手首の少し下でいいです。
板によって、手首が「後ろに反ることを完全に阻害できれば」いいのです。
しっかりと、くくりつけられるならば、テープではなくて、
帯状の布でもかまいません。


●やってみると、実は、相当に長年の間、
腰の動きが、あまり効率よく腕に伝達をされていないままに
打剣をしていたことが、よくわかるはずです。
最初の何本かは、ひどい暴投をするか、ひょろひょろの剣になってしまうはずです。

ただし、ほんの少しやって慣れれば、ものの数分で、
身体の使い方が改善され、腕の振り方も、効率がよくなります。

■ここで、重要な論旨は、手首のスナップなどの前後運動が、
「やっぱり打剣には大切な要素だったんだ」、
などという「スナップ信者・援護論」ではなくて、

この「手首の反りが阻害された状態」で打剣をすることで、
自分の身体の使い方に「多くの無駄があった」ことを、
学び取るということなのです。

ただし、実際にやってみない人には、何ひとつ、わかりません。

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>8/1-4:30

■前回、根岸流の剣について説明をしましたが、
そもそも、根岸流もその名前がつけられる以前〜以後の初期のころから、
発展し、分派してゆくに従い、剣の形状は変化をしている。

そういう意味では、これが根岸流の剣の寸法比や糸の巻き方である、
といった文献は残っていることはなく、また仮に特定の一門に、
そうした伝書があったとしても、それを称して根岸流の剣である、
と定義することも出来ない。そういう性質を根岸流の剣は持っている。

また多くの他流でも複数の変形された大きさ、長さ、重さの剣が使用される
こともあることから、もともと、手裏剣術と剣というものは、
日々、進化をし続けてゆくものなのである。


■根岸流の剣に限って言えば、それが私たちに与えてくれる、
最大の恩恵と課題というのは、剣体の設計である。

1/尾部に向かう部分の研磨角度、
2/切っ先から横手筋までの距離と角度、直径、
3/そして、尾部の糸の巻き方、

これらは、かつて一度も、公式には、細かい単位でテストされたことが
ないのである。つまり何のテストかというと、
根岸流の中の、どういう剣は、どの打法で、どのような距離に適しているか、
である。

この部分が、根岸流の、(武術体系ではなく)「剣」の今後の研究課題として
私の前に横たわっている。
尾部の研磨角度を少しずつ変えた剣を試作し、長い時間をかけて
論理面と、実物の打剣から、そこにある原則を割り出したいと思っている。

一説によれば、剣尾の「房の長さ」を変えることは、
距離調整の方法として、伝えられているが、
剣体そのものについては、秘伝的な部分または、そもそも、
「経験的な研究以上の探求」がなされていない、ということも多いようだ。

この「経験的な研究」というのは、言い換えると、
「個人的」な「主観的な、感覚的な経験値」ということで、
これゆえに、明府真影流の宗家の染谷親俊氏の著作には、
客観性を欠くものや、あまりにも性急に結論づけるような記述が、
いくつも見受けられるのである。

具体的に指摘するならば、


1/染谷氏の規定の剣は、
　一般論として「打剣が容易である」などと断定できる剣ではない。

2/手の内の「剣の保持の深さと、打剣距離は比例する」という事はない。

3/「4間内の距離」では、軽量を根拠とする、剣の速度の優劣などは
　実戦での「優位性を計る材料には全くならない」。

4/金属加工の容易な現代技術においては、
　「剣の製作が容易である事などには、大した意味はない」。

5/長さが15ｃｍ内外の剣は、その直径や形状が違うものは、
　言うまでもなく他流にも多くあり、実戦を想定した
　「携帯性や隠剣性で、特別に、他流に優れているわけではない」。

6/スナップをかけると、重い剣や、長い剣が、回転を起こしやすい、
　ということは断じてない。(ただし、この部分は2代目師範の著書での記述)

7/手裏剣術を難しくしてきたのは「剣の長さである」、
　という染谷氏の一番の主張部分も、全く客観性がない。

8/加えて、「私見」を言えば、その規定の剣は、
　「実戦的である」と称するには、軽量小型「すぎて」、
　刺中力が「あまりにも弱すぎる」。ほとんど威嚇にしかならない。

ようするに、その実像に反して、あまりにも「安易に」、
「実戦的だ」とか「打剣が容易だ」「従来のものより優れている」、
などということを、深く思慮もせずに、師範も、その弟子たちも、
言い過ぎたわけである。

明確な根拠もなく、「実戦的である」とか、あるいは、さらには
よく研究もせずに、他の流派は、打ちにくい長い剣を使っているだのと、
「妄信的に」言い張るが故に、
どんどんと、おかしな方向性へとつき進んでゆくわけである。


■これは、明府真影流に限らずとも、
たとえ「どの流派」に属していたとしても、
手裏剣術というのは、深い研究がほとんど「手付かず」の領域であった
という状況を考えるならば、
そもそも、「その主張を過信するに値するような体系自体」が、現在まで、
ほとんど、どこにもないのである。

染谷宗家の、唯一評価できる点、というのは、先人の定説を疑い、
それを実験しようとした「その姿勢」であるが、
残念なことに、その肝心の「実験の結果」には、
いろいろな誤りもあるのである。

その誤りを証明する「方法」は、実に簡単である。
(方法は簡単なのだが、
　客観的な立場の協力者を集めることが実現出来ないだろう。)

その方法とは、染谷宗家と「全く同じ実験」を、
統計的には厳密には最低でも、50人が行ったときに、
その「打剣結果表」が宗家の出した数値に大きく偏ってゆかなければ、
その実験は、単に「宗家個人の主観的な範囲のもの」に留まる、
ということである。

またここでの最大の問題は、その実験結果を出すためには、
実験条件を当時と同じくするために、「香取神道流」の打法を身につけた者が
50名以上必要である、ということなのである。

さらに、もしも「一般論」として「打剣が容易である」などと証明するためには、
全くの初心者を50名以上集め、かつ、それが「他流派よりも容易である」
などと、依然として豪語したいのであれば、
他流も50名、召集して「比較表」を作成しなければならないということ。


■手裏剣術に限らず、科学実験でも、ある実験のデータが信用するに
値するものであるか、否か、再現性を有するか否かを分けるのは、
おうおうにして、実験の「前提条件の整備」に問題があったり、
「初期の段階で出した誤った推論」が原因であったりすることが、
圧倒的に多いのである。

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■さて、話を本線に戻しますが、
「打法」については、根岸流では、足の運びや、構え、腕の振りは、
「原則」として統一をされているので、その打法に限って、
ということにはなるが、
「中級手裏剣術」でも強調したように、本当の「剣の性能検査」というのは、
別の「複数の打法」で打つことも、してみなければならないのである。


■たとえば、以前に、私は小型軽量剣を使用する流派の人から、
根岸流に「似た」剣の試作品を依頼されたことがあったので、
そこで数種類の異なる剣を試作したのだが、打剣してもらった感想を
聞いて、愕然とした・・・というか「トホホ」であった。

というのも、その人には、その個々の剣の違いが全く解らないか、
または「誤解」をしているのである。


これもまた、以前に述べた小型軽量剣打剣者の、最大の欠点であり、
小型軽量剣という、手の内の状態のモニターが正しく出来ない剣を、
しかも特定の打法で長年打って来た人というのは、

真似事程度に、打法を少し変えて「異なる剣」を打っても、
結局は、長年染み付いた打法の癖が抜けないわけであるから、
剣体についても、そこにある「重要な差異」が解らないのである。


■異なる剣を打ち、その性質を見極める、ということは、
実は、通常は、その剣を、毎日毎日、時には一週間ほど打ち込んでみて、
始めて、解ってくることであり、
また、そうやって異種の剣を打つ癖がついてしまった状態を
リセットして、クリアーする確実な調整法も必要になる。
(これは単に元の剣を打ち込めば癖が解消されるものではありません)


ちょっと異種の手にして、適当に、本や、どこかで見聞した打法で
「打ってみたら、こうだった・・・」というような事で、
そんな事で、「結論」が出るような代物ではないのである。

ちょうどそれは、「一人の人間を知る事」と同じように、
剣と対話をしてゆく長い時間が必要なのである。

「剣を自分の命令に従わせて打つ」というような傲慢な態度ではなく、
感覚を研ぎ澄ませて、常に剣と対話し、剣から学ぶ姿勢が必要なのである。

ちょっとばかり、たったの「百回ぐらい」打ったぐらいで、
剣というのは、解るものではないのである。

ちょっと試しに打ったぐらいでは、
すぐに「打ちやすい、打ちにくい」ということは言えないのであり、
いわばそういう事をやってしまうのは、
「料理を、よく噛まず、味わわずに、うまいとかまずい」というのに
等しい。

「味音痴」「味覚障害」というのが、料理の世界であるように、
「剣音痴」というのが、手裏剣の世界にも、あるようである。

その最大の原因は、食と同じく、
「偏食」と、「早食い」という、悪癖のためである。

また、食について知るということは、食したあとで
身体がそれをどう消化したり、栄養になるかという
後のことまで見極めるということでもある。


■手裏剣の場合には、これは、特定の剣を打つと身体の各部に、
どのような動きが強制されたり、逆に負担が緩和されるか
または、打法に特定の癖がつくか、という事の細かい観察作業でもある。


■また、剣を、本当に客観的に調べるということは、
渡された剣によって、ごっそりと、
「打法というソフトウエア」そのものを入れかえないとならない必要がある。
また、その打法というソフトと、剣との何種類かの組み合わせも、
試してみないとならない。

そういう意味では、剣の性能について、私が「信頼」をおいて、意見を伺う、
という人は、八角流の師範の方だけである。

その人の場合には、十数年に渡り、やはり独自に無数の試行錯誤を、
「剣の製作」と「打法」の両面に対して、繰り返して来た人であった。

だから、打剣して戴いて、意見を伺うために私から送らせて戴いた、
「無冥流」の数種類の剣についても、
即座にその最良の有効距離や、
性質の特徴を、割り出して貰えたのである。


■つまり手裏剣術の最大の楽しみとは、「未完成」であることなのだ。
打法も未完成、剣も未完成。

根岸流の剣においても、今後は、前述したような、剣体の細部の加工の差異が
どういった効果をもたらすか、を研究する課題が残っている。
この課題を残してくれているのが、根岸流の与えてくれた最大の恩恵である。


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■逆に言うと、「剣の寸法に規定」を設けてしまうような流派は、
そこで流派としての進化が、完全に停止するのは確実な事である。

ただし、初代の教えを曲げたり、追加せずに、純粋に継承するために、
わざと進化をそこで停止するという事は、継承という行為には、
必要不可欠なことがある。

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■さて、ある「特定の基本稽古のためだけ」に稽古用の剣を統一する、
ということは、どこの流派でも行っていることである。

しかし、「これで完成された」といえる、最良の剣などというものは、
現時点では、あり得ないのである。


　　いかなる打法で打っても、
　　「最良の剣」であるというようなものは存在せず、

　　いかなる剣でも打てる「最良の打法」なるものも存在しない。


それに「近似」する剣というのは、以前に投稿した径13mm、全長165mmの
「タガネ」のような、実戦的な破壊力も、打剣の簡単さも、
かなりオールマイティーに近いものはあるが、
むろん、それも、「完全」ではない。

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■原則として、「打法が、完成されたものとして確定している場合」には、
「剣の性能」を、さらに探求し続け、進化させ続けなければならず、

　逆に、「剣が、完成されたものとして確定している場合」には、
「打法」を、さらに探求し、進化させ続けなければならない。


後者の「好例」を、私は見たことがあるが、
それは以前に紹介した、「超重量剣の流派」です。

その流派は、それ以上にほとんど改良の余地がないほどに、
完成された剣が、「由緒ある形」で伝承されている。

その剣を打ちこなすための打法も「必然的に限られてきた」という、
経緯を歩み、その技を深く探求し、練磨し、完成されてきた流派である。

唯一、その流派だけは、私は「例外的」に、
そこで、剣も打法も、「ほぼ完成されている」と思えました。

そして、逆に言うと、それは「手裏剣術」という「広域な世界」での
進化としては、そこで停止をしますが、
後世に継承されるべき「重要な歴史的流派」としては、
限りなく「揺ぎ無い、実戦的な完成度に近い構造」を持った
「体系」であると言えます。


■ただし、私が知る限り、そう思えた「不動の体系」というのは、
唯一、その流派だけです。

八角流は、逆に「決して、その進化を止めない流派」と私の中では
位置づけられています。


まだ私の知らぬ伝統流派はむろんあるだろうが、
いずれにしても、

　　畢竟、手裏剣の「研究」(単なる「修行」ではなく)とは、何なのか?
　　ということを突き詰めれば、


　　ある剣が存在したら、その剣に最良の打法を編み出すこと。

　　ある打法が存在したら、その打法に最良の剣を編み出すこと。


　　これに尽きます。そして、

「その両方を同時に平行して行う」ためには、


　　　　剣に「進化の余地のない規定」を設けてはならないこと。

　　　　打法に「進化の余地のない規定」を設けてはならないこと。


この2点が必要なのである。

ただし、あくまでも「基本稽古」の「プロセス」としては、

　　　　特定の打法には、特定の剣を必要とする。

　　　　特定の剣には、特定の打法を必要とする。

という形での術の体系にはなってゆくだろう。



■しかし、それらの2面を総合的に「行ってゆく」ということは、
他人が既に引いた規定のレールの上に乗っていたり、
他人が規定したルールや、流儀の中、看板の中においては、
絶対にやってはならないことなのである。

それをするということは、如何なる理由と「言い訳」があるにせよ、
その「流儀名の看板を汚し」、看板に要らぬ「落書き」をすることであり、
それは、後世の人たちに、混乱した情報を残す「汚点」にしかならないのである。

　　「看板を背負うなら、進化を完璧に止めろ」

　　「進化したいなら、看板を背負うな」

しかし、このどちらにも「スタンスが徹しない」のだけは「最悪」なのである。

ひとえに、それは、そうした組織的修行の
「最終目的を、意志の中で、明確にしていない」ために、
「途中で、当初の目的が、ふらふら変わってしまう」という事が、
原因となることが圧倒的に多い。



■故に手裏剣術を、「進化」させてゆくためには、
学んだことを基礎として、「新流」を立ち上げて、
「一人一流」で、
そこに「心身の技」を、剣に打ち込んでゆかねばならず、また逆に、
剣の「性質」を、自分の心身に打ち込んでゆかねばならないのである。



　　　　　　　　　　　　　　■

ちなみに、たまに誤解をしている人がいるようですが、
厳密に言えば、「無冥流」という手裏剣「術」が存在するのではなく、
無冥流とは、「研究方法の流派名」なのである。

すなわち、手裏剣術というものを「研究する姿勢」に
名づけられた名称なのである。

したがって、今後、こうしたいろいろなテスト、試行錯誤をしてゆく
人は、時に他者から「【無冥流的】な、研究方法ですね」、
などと称されることも出てくるに違いありません。

それはそれで私は良いと思います。
が、しかし、書籍の中で、私が、暫定的に「無冥流」と名づけた
剣の寸法や打法というものは、
未だ、未完成で、進化し続けてゆくものと認識してください。


　　「無冥流」とは、多くの流派がそうであるような、

　　　　　　「技の体系の名前」ではなく、
　　
　　　　　　「研究流派」の名称なのです。


　　　　　　　　　　　　■

★ . 　　

>◆7/30　夜更新

ネット上で見つけた【根岸流手裏剣製作の論文】
個人的には、かなり面白かったです。
↓
http://www.arkweb.co.jp/~hirochen/yamatoaiki-column/shuriken/shuriken.html


◆ところで、長年試作品を作ってきた経験上、
5、6間、前後から3間前後までの全ての距離に
対応できる手裏剣の形状というのは、前後が対称の重量と
形状を持つものという結論になりつつあります。

この原則が、太さや長さがどれぐらいの剣にまで適応されるのかは
徐々にテストをしてゆく予定です。

現時点では、結局のところ、根岸流のような前重心の剣は、
最も有効な射程距離が、わりと狭く、
たとえば、4〜5間の範囲であったりします。
(6間以上を打つ剣は、微妙に剣の形状や尾部が異なるようです)


●原因として考えられるのは、剣の形状の偏りです。
それを今日まで、沢山のテストし続けて来ました。

たとえば、同じ前重心にする方法でも、
剣体の形にもいろいろあります。

>1◆槍のように、「ある部分からストンと直径が変わるもの」、

>2◆「なだらかに剣尾が細くなってゆく」もの。

>3◆剣底から軽量素材の「接ぎ部分」を入れた剣。

「接ぐ」というのは、「重心の調整」のためと、
「手の内での保持のしやすさ」のために
剣の長さを後部に非金属物質で、接ぐわけですが、材質としては、
木や、なめし革をまるめたもの、糸や布を束ねたもの、などがあります。

この場合には、剣のある部分から極端に重量が軽くなる構造です。


●こうした剣の全長のうちの「どこが重くて、どこか軽いか」ということは
剣を製作する上と、打剣をする上で、非常に重要なことです。

なぜならば、それは形状によって、その剣の「どの部分」に力を
加えるのが一番有効であったり、飛行が安定するのかに
関わる問題だからです。

たとえば、剣尾を、必要以上にやたらに軽くしたり、軽くて長くすると、
逆に首落ちしやすくなります。

かといって、普通の前を削っただけの中央重心の剣では、
距離も伸びず、何よりも威力が出ません。


●そこで試行錯誤の結果、現時点で、理想的と思われる形状は、
「前後対称形の剣で、剣尾に巻物をした剣」です。
横から見ると、「左右対称」と言うべきでしょうか。

槍のように、単に重心を中点として、前と後ろの重量を同じにしても、
空中での姿勢の安定がなかなか得られない場合もあります。そこで、
形状も前後が、ほぼ全く同じ形にするわけです。

そして持ちやすいように、剣尾側は、糸などで成形します。

つまりいわゆるロケットのような形をした、
伝統的な根岸流の手裏剣とは違う形状になるわけです。

_________________________________________________________

>7/31更新


●しかし、ここで、伝統的という場合に、一体
根岸流の手裏剣のガイドラインとなる形状はどれなのか、に
私は前から疑問がありました。

まず↓の図を見てください。



一番上の「勘違い系」というのは、冒頭に述べた卒業論文にも
出てきますが、これは、
「柳生流・新陰流」または「水戸藩」に伝わったとされる、
「基部が十字」の手裏剣の側面図を、写真の陰影で、読み違えたか、

または、糸が巻いている外見の形状から、中身の本体の金属部分も、
このように、剣尾が膨らんでいると、勘違いしたのではないでしょうか?。
(たぶん、こちらが主な原因だと思います。)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

のちに知ったのですが、この形状は、勘違いではなく、
独自開発したもののようです。

それは「岩間流合気道」の、斉藤守弘師範による特性のもののようです。
氏は、根岸流手裏剣術者でもあったようです。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊




●しかしながら、もしも、「極端に」言うと、この形状、
つまりは、昔の空気銃の弾の後部みたいに、
あるいは、「てるてる坊主」みたいな尾部をしているとすると、
この剣は、実質的に中央重心か、下手をすると後ろ重心に
なってしまう場合もあります。

ただし、このユニークな形状には、
それ特有の、打ちやすい打剣距離というのは、あると思います。


●しかし、本来の根岸流の剣に、最も近いのは、下から3番目の、
「本来の糸や毛の巻き方」と題した形状のものであろうと
私は推測しています。

つまり、たまに見かける通販の「根岸流と称する商品」の中には、
一部、とても根岸流とは呼べないようなものがあります。

それは剣尾に向かう面の研磨角度があまりにも甘すぎて、
前重心にもなっていない、「ただの普通の棒手裏剣」に、
限りなく近いものがあるということです。
その場合には、根岸流の打法が活かされません。


●斎藤氏、苫米地氏の使用しているものは、原型に「かなり、近い」とは
思うのですが、「個人的な見解」では、もっと尾部に向かっては、
面取り部分を削り落として、もう少し、前重心にすべきだと思いますし、
また、糸の巻き方が、若干ですが、変です。

糸の巻き方は、もっと、剣尾に向かっては、広がっているべきで、
これは、何段階か(3〜4段階が丁度いい)に、
糸の巻き方を「階段状」に巻いて、そのあとに、
最後に全体を表面糸で巻けば、なだらな広がりを持つ形になります。

この尾部の末端が横からみて、なだらかな扇型、
または円錐の底面のようになっている部分の、
この「広がりの角度」や「太さ」が、
根岸流の手裏剣の打剣には、非常に重要な事と思われます。


そういう意味では、私は、写真で、ちらりと見ただけなのですが、
前田師範の使われていた剣が、それに一番近いように思いました。

また、甲野氏の剣は、御徒町の鋼材店に寄与されていたものを、
実際に手にして観察した事があるのですが、
全長が約186ミリと、古来のものよりはかなり変形された長い剣なのですが、

私が見てきたかぎりでは、あれは相当に「性能の良い剣」の部類に
入りますし、「剣身自体のバランス」も、「尾部の巻き込み方」も、
源流の根岸流の「原則的な部分」を、守っている剣だと思います。

この場合に言う「源流の根岸流の剣」というのは、
とにかく、「横手筋」の直径がきちんと太くて前重心になっているか、
さもなければ、剣尾に向かって、よく削り込まれた形状であるのが
ベストであろうと私は思っています。

市販品とか、あるいは画像資料で見る一部の根岸流と称する剣には
どうも、根岸流と名づけるには、
「全く意味のない形状」のものが、一部には、あるようです。

ただし、かといって、あまりにも剣尾に向かって細くしすぎたり、
軽量素材を接いで、剣尾を軽くしすぎると、
飛行姿勢や飛行距離に支障が出ます。

このあたりは、かなりの試作と、研磨の微調整を繰り返し、
かつ、いくつか打法を変えて打ってみないと、わからない事なのですが。


●また、剣の全長が短すぎる剣身の場合には、
剣の後部に非金属物の接ぎなどを入れるという、
本来は、「必要もないこと」をしなければなりません。

糸を巻きつける「芯」となるものが、強度があれば、
細くても、わずかでもあればいいのですから、
基本的に、剣の後ろに、布や、糸、革、あるいはガーゼなどを、
固めて接ぐということは、
「手の内での剣の位置の調整のために、しかたなくすること」であり、
「無駄なこと」であるといえます。

それをすることでの「メリットは、ありません」。
その非金属部分の「弾力(の反撥力」などは、
とても、打剣に有効に使えるほどのものでは、到底ありませんし。


●ただし、以前に存在した剣尾の房を、のちに、切った「結果として」、
房の一部が残っていたために、あたかも、接ぎの部分があるように
見える剣はあります。

また、人によっては、剣の後部に剣が当たった場合のことを考えて、
刃先を痛めないように、剣底に少し接いだ糸を、
うるしなどで固めておくことはあります。


____________________________________________________________


◆余談ですが、
陸上競技の槍投げの選手は、500g、長さ2.7メートルの棒を
60メートル以上も飛ばす・・・・。

そこまで飛ばせる同じ潜在力が人間の身体にあるのに、
なぜ、棒手裏剣にそれが出来ないのか。

つまり、根本的に、
投擲動作というものと、その物体の形状の問題を、
これから、私は、考えてゆかねばならないのであろう。


________________________________________________________________


◆さて、槍の話だから、というわけではないですが、
今回は、手裏剣をまるで「槍のように、まっすぐに飛ばし」、
かつ、威力を失わないという特殊な方法です。
原則的には、これは手裏剣術というよりは、「遊び半分」ですね。


◆普通の棒手裏剣の剣尾に、重さが軽い「竹の箸」を取り付けています。
↓


↓このような感じです。取り付け方は、自分の剣に合わせて
　ジョイント部分を自分で工夫すべきです。


↓打ち方は、反転打のような手の内で持ちます。
　
ところが、打ち出すときは、こうした特殊な打ち方をします↑。



◆こうすると、威力を十分に保ったままの剣が、標的に突き刺さります。
飛ぶ軌道は、手離れから、的まで、ほとんど「一直線」です。
何度やっても、房つきの剣よりも、確実に直進して、ヒットします。
室内ですのでこの画像は、距離は4間からです。
↓
　

********************************************************

■以上の打剣方法は、「中級手裏剣術」の中に詳しく出ていますので、
知りたい方は、書籍をご覧ください。


ここでは、その要点だけ、簡単に説明します。
　　　　　　　　↓
書籍「中級手裏剣術」の中では、剣尾に、

>「約15cmの麻紐を4本つける」
>「吹き矢の息受けのような、紙またはフィルムの円錐の筒をつける」
>「剣尾にティッシュをつける」

などの方法が紹介されていますが、
いずれも、欠点としては、房の代用品などによる空気抵抗で、
「剣の威力が弱まる」ということです。

しかし、この
>「軽い木の棒」を剣尾に接ぐ、

という方法では、その威力をあまり失うことなく、
剣が飛行し、的中します。

◆注意点は、この箸を接ぐ剣の場合には、
剣それ自体の重量が、約60グラム以上ある方が、
まっすぐに直進しやすい点です。

◆なお、画像の私の剣は、
すばやく「箸」を、刺し込んだり、抜いて取り外したり出来る、
「着脱可能」な穴が、剣尾に深めに開いていますので、
携帯も簡単に出来ます。


それでは、参考のために、以下に、
「中級手裏剣術」より「要約」のみ抜粋します。
__________________________________________________________

◆普通は、剣の後ろに「房」がついているのですが、
簡単で、立派に役目を果たす代用品としては、
このように、剣の後部に「円錐の筒」や「ティッシュ」をつけます。
　↓


●それを下記の連続写真のような打ち出し方をします。
　　↓
　
　

◆いうなれば、コツは、紙飛行機をこのように
投げるような感じ、というのが一番適切なたとえになります。
　↓


◆↓ティッシュでも、結果は同じです。




◆↓このような紐を4本つけただけでも、十分です。



◆ただし、房や、房の代用品の場合には、
いずれも、「軽量の木の棒」を取り付けた場合よりも
威力、スピードなどにロスが生じます。

■このあとの課題は、この「木の棒の延長部分の長さ」を、
どこまで短くしても、槍のように直進飛行するかという、
限界点の見極めと、剣体との寸法比の割り出し作業です。

加えて、この木の棒つきの剣が、
何グラムの重量剣まで、有効に作用するかの実験です。

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★ . 　　

>●7/28更新

【手裏剣の設計上の「誤差範囲」について】

■長年、手裏剣の寸法設計や、自分で研磨作業をしているから
解るということもあるのですが、
その経験的な感触を度外視しても、
手裏剣には許される誤差の範囲というものがあります。

端的に結論を言うと、以下の通りです。


>■長さの誤差===5mm以内

>■直径の誤差===0.5mm以内

>■重さの誤差===3g以内

>■重心位置の誤差===2mm以内


従って、もしも「この誤差の範囲を逸脱」した場合には、
その手裏剣は、元の「基準／規格」から「外れたもの」と定義されます。


■この誤差は、当然重量剣ほど感じにくくなります。
この誤差が重要になるのは、主に100g以下の手裏剣においてです。

つまりは、根岸流の115グラム近辺の重量剣を除いては、
現存するほとんどの流派の手裏剣が、この誤差が問題になります。
又、特に60グラム以下の手裏剣では、この誤差は、
打剣に大きく影響してきます。

その明らかな違いに気づかずに、無神経に打剣をすれば、とうぜん
打剣にはムラが出るか、または、その基準から、外れた剣を、
うまく打とうとすることで、
逆に、変な癖を手や身体に学習させてしまうことになります。


■これに対する、よくありがちな反論というのは、
「昔の人の作った手裏剣は、機械旋盤ではなく、手作りだから、
　大きさも重さもかなりまちまちである」
という一般論ですが、これは間違いです。

昔の人ほどに、モノを大切にしていましたから、
彼らは、一本一本をカスタマイズしていた可能性が大なのです。

たとえば、長さや重さや太さが微妙に異なる場合には、
剣体のどこかを削ったり打ち伸ばすことで、
「全体のバランスを取る」という方法です。

つまり、一見すると、ばらつきのあるように見える剣も、
実は、本人には同じ感覚で打てるように
部分的な微細な修正を施していたわけです。


■たとえば、私も長年使っている剣が剣先が傷んで、1センチほど短く
なることもよくありますが、その場合には剣体のほかの部分を少し削ったり、
打ち直しをしてもらったり、あるいは剣尾に何かを接いで長さを延長して
「バランスを元に戻す処置を施すこと」で何年も同じ剣を使っています。
手裏剣を始めて以来、剣を捨てたことは、ただの一度もありません。


■さて、この寸法や重量の誤差を、手の感触として感じられない、あるいは
打剣に影響していることを感じられないというのは、
ひとえに、稽古をしている人の「鈍感さ」か、
あるいは、無神経さ、または、打法が一定していないかなどです。


■私は、厳密の自分の打法を、「機械が打ち出すように一定にする」
ということを、完全にそれをなすのは、不可能であるにしても、
極力、心がけてきましたので、打剣時のすべての要素を、
何本か、同じ状態で剣を飛ばしたときの「差」というのが、
感触としても標的上の結果としても解ります。

また、打法そのものを、6種類以上を打ち分けますので、
それによっても、さらに詳細に、剣の寸法誤差が検品できます。


■この剣の寸法誤差、つまり剣の「性能」というのは、
これまた、「中級手裏剣術」で結論したように、
3間半強から4間以上の距離から「顕著」になりますので、
その距離で打剣したときに、はじめてその差が表面化して解るものもあります。

それ以下、つまり3間半以内の打剣距離では、
原則として、剣の「打剣性能」などは、
どの流派の剣も、すべて「同じ」であるので、
その次元で「剣の優劣など」を言うこと自体が、
「全くのナンセンスな行為」であると、断言できます。
(ただし、打撃威力に関しては、当然、重量がある方が有利ですが)


■また、剣の速度については、3間半以内などという至近距離では、
どの打剣者の速度でも、大した問題になりません。

なぜならば、その剣を避けるのは、何も走行している列車や車ではなく、
人の動作なのですから、剣速が、150キロだろうが、120キロだろうが、
3間半以内というような「至近距離」では、論外なのです。

しかも、人間が打剣するかぎりは、
コントロールが、3間半から、それこそ、
「寸的を絶対に外さないほどの腕前」でないかぎりは、
速度の差は、結果にも現れようがありません。


また、仮に打ち出すものが、人ではなく機械で正確に小さな的の位置に
打ち出したとしても、
3間半以内の距離で、相手が「人間」ならば、その差は問題になりません。
(おそろしく遅い打剣をわざとするか、
　剣の重量が１００グラム以上とかになると、話は別ですが。)


■野球のピッチャーの球が140キロであるか、120キロであるかで、
打てたり、打てなくなる、あるいは避けたり避けられなくなるのは、
そこに目視可能な距離が約18メートルもあるからであって、
それが、たったの6メートル前後では、
差異は、ほとんど問題にならないのです。

馬鹿でも解るたとえは、
もしも、たったの６メートルの距離から投げられたら、
時速１２０キロのボールも時速１５０キロのボールも、
共に、人間の動作と動体視力では、同じような結果となるということです。


●これゆえに、至近距離戦ほどに、
剣は、その「大きな速度差が出ない範囲内の、限界の最大限度」まで
「重く」し、「先端も可能なかぎり鋭利にする」という必要が出てきます。

3間半以内であれば、60グラムの剣も40グラムの剣も、
「戦闘に現れる結果」は、同じである、と見て良いです。

だからこそ、こうした「至近距離」での勝敗を決定的に分けるのは、
速度ではなく、
「重量」と「先端の状態（角度または鋭利さ）」ということなのです。

むろん、これに加えて、戦術的な剣術や手裏剣の
「技」の組み立てが大きく左右します。

ということですから、
もしも、射程距離が「3間半以内」であれば、
「軽量剣、盲信信者の皆様」は、最大で、
「約60g〜65ｇ以内」までアップすることが理想ということになります。
この範囲内ならば、いつもの軽量剣の打剣時の、
身体全体の動作や、手首の動作が、
「問題になるほどに、遅くなること」もありません。

むろん、打ち出す力量には、個人差がありますから、
剣の重さは、65グラム以上でもよくて、とにかく、
3間以内の距離で、スピードに差異がないと思われる自分の限界まで、
剣の重さを増したり、形を変形するのが、
実戦を想定すると主張する者なら当然の行為であるということです。


_________________________________________________________________

■さて、前述した剣の寸法誤差が、剣の飛行に如実に現れるということは、
つい最近になって、ようやく、結論したことです。
各要素が、微妙な差を作り出していることはわかっていたのですが、
(かなりおおざっぱですが)「数値化」したのは、今回が初めてです。

というのも、私の手裏剣の研究は、70グラム内外の中量剣にはじまり、
その後、実にいろいろな剣に接し、現在では、下は30グラムから、
上は250gの剣まで、幅広く、形も多種のものを打剣しましたので、
そのすべてを、もう一度見渡したときに、はじめて
最終的に「許されるであろう誤差範囲」についての結論が出たのでした。



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　●書籍「中級手裏剣術」は
　↓をご覧ください。
http://www.mumyouan.com/k/?M722


■現在、新宿のコンクリートでも注文が多く来ています。
http://www.taiyo-planet.co.jp/konc/index.htm
↑のサイトの「商品紹介」→「手裏剣」とクリックすると出てきます。

■神田の書泉グランデ2fの武術コーナーでも好評発売中。

■中野の古書大予言でも、発売中です。
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>●7/26更新●

●テスト用の剣が2種類あがってきました。
尾部の直径が0.5ミリ違うだけで、
たったの2.5グラムの違いなのですが、
4間以上から打剣すると、これが伸びに、けっこう大きな差を持ち、
また、明らかに感触として異なります。

人間の目はよく、平衡感覚が優れていて、ちょっとでも
絵の額縁が曲がっているとわかるようですが、
手の感覚というのも、たとえ2.5グラムの差でも、
ちゃんとわかるものですね。

●「槍型」の前重心の剣です。


●墨染を施したところ。


●糸を巻いたところ


●糸のへこみ(起伏)を、塗料で少し埋めて潰します。
↓そのための、うるしを塗ったところです。
　糸を巻いたグリップというのは、すべり止めの為にあるのではなくて、
　剣尾を持ちやすく「成形」するのが目的なので、
　「適度なすべり」が必要なのです。
　このあたりは、非常に微妙な表面の調整が必要です。



●それと鋼材によって違いますが、
　今回の鋼材は、先端の焼き入れのときに、5度cの水温で冷却すると
　最も、曲がりにくく、折れにくいものになると解りました。
　強度のテスト用に、うちには、やたらに重い(つまりは硬い)丸太が
　あるので、それに、まっすぐに打ち込む以外にも、
　わざと斜めに、相当に無理な角度で打ちんだりしてみて、
　先端部が、折れたり、曲がらないことを確かめるのです。

　私は木の種類には、まったく、うといので、
　硬い木と、そうでない木の見分け方は、同じ乾燥状態で比較して、
　とにかく、「比重が目だって重い」木材とか丸太ですね。
　手に持ったときに、なんで、こんなに重いんだ?と思うような木ですね。

　あとは、ノコで切ろうとすると、えらく難儀するような木が
　硬い木でしょうかね。
　重い木というのは、組織が詰まっているから硬いのでしょうかね。
　うちにある「剣の強度テスト用の木材」は、そういう木です。


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■剣と基本打法の研究が「中級手裏剣術」で一段落したあと、
最近は、構えについて、摸索しています。

主に行っているのは、「右入り身構え」です。
知新流などを除くほとんどの手裏剣術の流派は、
「左脇構え」で構えて打ち手と逆の足が前に置かれています。

つまり、足の立ち位置や足の角度の微妙な違いと、
剣の構えの位置は、各流で違いますが、
基本的には、乱暴に行ってしまえば野球のセットポジションのような立ち方、
または、空手の突きの「構え」のような立ち方なわけです。

しかし、これは、もしも刀を持っていて、打剣後に左腰から抜刀する
には、非常に効率の悪い構えです。

「前後」に連打するときにも、右入り身構えの方がよいし、
それ以外にもいろいろな理由はありますが、
とにかく、立ち方を変えています。

そこで、そもそもこの立ち方がどう打剣に影響するのかを
考えるために、まず、私は根岸流の古来の本来の打法が
どういったものであったかを、知る必要がありました。

■というのも、故・前田師範は、すでに別名を「真鋭流」と呼称する
打法になっており、それは、右足前の状態から、左足を踏み込んで
打つという独特のもので、すでに根岸流の源流とは異なり、
また、そこから分岐した甲野氏も原則として、
右入り身構えから右足を踏み出すということになっています。

しかし源流の根岸流は、あくまでも左脇構えで、左足の踏み出しで、
剣は後頭部付近に構え、振りは弧を描く。
腕や肩の力は抜いて、腰の回転で打つ。ということになる。

一方、右入り身構えの利点としては、

１／打剣距離が縮まる。
２／腰を切って打法しないので動きが速い。
３／打剣後抜刀しやすい、または、左方向や後方に打剣しやすい。
４／身体への負担が少ない。
などである。

「中級手裏剣術」で、「直立打ち」というのがあるが、
それは、この右入り身構えからの打ち出しの基礎訓練も兼ねている。

■ところで、前田師範の独特の足の踏み出し方の最大の利点は、
構えた体が前を向くので、古流の根岸流とは異なって、
腰の切れで打つというよりは、前進する体重移動で剣を
打ち出している点である。
(むろん古流ほどでないにしても、腰の回転も少しだけ使われてはいる
と思うが)

この打法の最大の利点は、自分でやってみて初めてわかりましたが、
コントロールが格段にあがることです。
それは、この「真鋭流」の踏み出し方は、頭の位置がブレないために、
コントロールが極端によくなりました。

ノーコンだった私が、この打法にした瞬間に、
3間強の距離から、5本中5本とも、直径10センチ以内に集まる
ということが、何度も起きました。

ただし、むろん、前田師範がコントロールを重視するために
この打法を採用したのかどうかは定かではありません。
私個人の場合には、結果として、頭の位置がブレにくかったというだけです。

■ということで、いままで多くの流派と同じ、左脇構えだったものを
最近は、右入り身構えから打つということを始めています。
と、同時に、中国拳法の動きの中にも、3つほどは、
打剣に直接に応用の出来るものがあります。

今現在使っているのは、孫派太極拳と、陳家太極拳、そして長拳の中にある
打剣動作に繋がる構えかたです。
また、青竜刀の振り方も、片手で振るわけですから、
打剣動作に転用できる身体の動きを含んでいます。

それらは日本の古来の手裏剣術の中には、決して登場しない構えですが、
剣の威力を上げるには、かなり効率のよいものが素材としてあります。


■古来の代表的ないくつかの流派の打法と、中国武術の動き、
これらを総動員して、現在、無冥流の基礎打法以外の、
次なる変形打法の開発にかかっています。

そして、こうした研究をするときに不可欠なのが、
「重量剣」なのです。軽量剣では、打剣の身体動作の際に、
どういう力が有効か、無効で無駄かを全く認識(モニター)できないからです。
重量剣は、実戦的であるという以外にも、
打法の研究開発には絶対に欠かせないものなのである。


■余談ながら、無冥流のように、剣の構えの位置を極端に
「低くする」ということには、多くの利点があります。
いろいろな打法をやっていて、あくまでも、結果としてそこに行き着いた
ということなのですが、
剣を低く構えることには次の利点があります。


１．軽量、中量、重量剣、超重量剣、
　　そのいずれにも対応できる構えであること。

２．打剣動作がコンパクトになる。

３．いかにも構えているところを相手に見られないで、
　　剣が飛び出してくる。

４．低く構えることで、腕を振れる距離が増加している上に、
　　近距離でも遠距離でも、どういう間合いの距離でも、
　　剣が水平か、もしくは斜め上向きに発射されるので、打剣距離が伸びる。


■ちなみに、私の最近の打法は、剣を頭の付近に構えずに、
だらりと手をたらした状態が実質的には構えとなり、
打剣の足の踏み出し動作に入ると同時に、剣の構えが開始される
という動きに、なりつつあります。

　　　　　　　　　　　　　■

◆この投稿の続きは、書籍化されました◆

詳細は、下記の書籍案内をご覧下さい
↓
http://www.mumyouan.com/k/?M722

★ . 　　

■以下は、映像関係で、武術指導をされている方との交流の中で、
あてた手紙からの、一部抜粋です。

ここでは、「実戦」ということではなく、
今度は、「撮影現場」における手裏剣術、の問題を語っています。

_____________________________________________________________



・・・・本を謹呈をさせて戴きましたが、
もしも、何かの時に、演出として必要となりましたり、演技の参考にされたい
方などが、おりましたら、どなたかへと、お譲りされてください。

もともと、営利目的は度外視して、とにかく、「必要とする人の手だけ」に
渡って欲しいという思いが、非常に強い中で執筆した本なものですから。

たったの１６０ページの内容に、約3〜４年もの歳月がかかってしまいま
したが現時点では、私に解ることは、ここまでです。

なお、今回の、初版の原稿からは、漏れてしまいました一部の草稿は、
「松の間掲示板」で、続編を現在も、たまに執筆しております。



●ちなみに、私などよりも、手裏剣術の上手い人は、
むろん世の中には何人もおります。

しかし、流派の主義などを理由として、対外的に接触しない人も多いですし、

また、キャラクター的に、社交的な事が苦手である、という人もいますし、

また、使っている剣が小さすぎて、映像では迫力がない、とか、

そして、なかなか技術の取得が困難であること、など

いろいろな理由が、手裏剣術が映像の世界に「トリックなしで参加すること」、
に至らない原因として、ありますね。

●しかし、投剣シーンほど、CGとか、アングルの移動でごまかすと、
わざとらしいシーンもなく、どうもそこで、いかにもウソっぽさが
滲み出てしまうなー、とよく思いました。

私が子供時代に、見た投剣系の漫画やドラマで思い出すのは、
「荒野の7人」以外には、「特攻ギャリソンゴリラ」「アパッチ野球軍」「愛と誠」
そんなところでしたかね。

あとは、欧米のサーカスの映像で見る、
女性を立たせての投剣芸のシーンや、

インディアンの人が実演していた、「斧投げ」です。

近年の日本では、たまに昔、テレビで、甲賀忍術の方が、
「鎌投げ」や「箸投げ」をやっておりましたね。


子供ながらに、あんなこと、本当に出来るのかなーと考えたのが
中学のときで、やってみたら、相当に苦労するものの、
出来なくはないという事がわかり、それから、投剣というものとの、
お付き合いが経過しました。


●私が、最初に投げた最小の飛び道具の物体は、
子供の誰しもが、そうであるように、「画鋲」でした(笑)。

次が、肥後ナイフをテープで固定したもの。中学1年のころでした。

その次が、交換式ドライバーのキリ(これは思えば、丸型の棒手裏剣にそっくりですね)

その次が、普通の小型の登山用ナイフ。

次が折りたたみ式のナイフ。でも折りたたみ式は、よく壊れました。

そして、はじめて手にした、たった一本のスローイングナイフを大切に大切に、
何度も研ぎ直しては約4年に渡って、反転打で投げるという時期がありました。


そのうち、社会に出て、十何年も剣に触らない時期が経過して、
1999年に、再びその世界に出合ったのときは、
なんと、日本の古武術にすでにその体系があったという事を知ってでした。

___________________________________________________________________


「荒野の7人」などもご覧になられるとわかるように
せっかくの、かっこいいコバーンの下手ナイフのシーンが、
スタントマンやスローワーなどによる「実際の投剣」ではありませんでしたし。

人から薦められてみた、アントニオバンデラスでしたかの主演した、
ハチャメチャの西部劇みたいな映画で、登場してから、すぐに死んで
しまうナイフ投げ男。あれは、現実のそれに近かった部分がありました。
ナイフの持ち方、腕の振り方、そして飛んでゆく方向や
刺さり方のリアルさなどなど。


●投剣のシーンというのは、子供が、すぐに真似をしたがるので、
あまり、映画とか、映像で、本当のやるのは、いかんかもな、
とは思う反面で・・・、

CGの多い、撮影に慣れてしまっている子供たちこそ、
バーチャルなものや、アニメや、CGではなく、
本物を見ることで、心に深く残る何かがあると思う事もあります。

そうした投剣シーンを見ていて、幼いころの私の心に残ったのは、
言い知れぬ、「感動」だったんですけどね。

何かとても複雑で難しいことを、何気に、やってのけている人たちへの
驚きとでもいいましょうか。


●私見ながら、子供のときに、偽物を見るのは、良くないですね。
それがその子供のその後の美観とか、価値観の土台になってしまいますから。
(まー、怪獣とかウルトラマンを「本物を見ろ」というのは、無理ですが(笑))


子供とか(最近では大人でも、)ああしたことは、絶対にマネをしてほしくない、
と思う反面で、見せるなら、本物を見せるべきだという、
この二つの矛盾する気持ちが、私の中にはあります。

結論としては、投剣というものは、真似しようとしても
「すぐには」出来ないですし、
片刃が鋭利だったり、重量のある手裏剣や、両刃のナイフでないかぎりは、
実際の危険性というのが、見た目よりも、かなり少ないということも、検証を
してきましたので、いつか、こうしたシーンが、
何かの映画で使われることも、あるのかもしれません。


もしもそうした、脚本とか、演出での機会がありましたら、
ぜひ、「中級　手裏剣術」を参考に、打剣をされてみてください。
そして、もしも解らない点がありましたら、お気軽にお尋ねください。

付属のビデオの中で実演しておりますように、
中型の大きさのナイフを4間の距離から、直打法と言われる方法で、
4本ほど立て続けに刺しておりますので、
ナイフに特有の打法も、ある程度は心得ております。

_______________________________________________________________

ただし、・・・

「ただ、単に剣を打つ」、ということと、「撮影の中でのそれ」は、
おそろしく、違っております。

劇というシーンの中では、役者さんの一連の連続する「動き」の中で
打剣をしなければなりません。

そうすると、剣を打つときに「構えることで動作がそこで止まる」
ということが「ストーリーとして見た目に、不自然な映像」にならないように
することが、監督さんと役者さんにとっては、とても大変なのです。

●私たちのように、ただ畳に向かって、稽古をしているというのでしたら、
それは、もう形が決まっているからいいのですが、
ドラマの「ストーリーがあくまでも優先されるべき映像」のその動きの中で、
たとえば、セリフを言いながら打つ、

また、どれぐらいの距離を打つか、撮影角度はどうか、
何の標的に打ち込むか(音が良いのは木の的です)、などによっては、
役者さん本人とか、監督さんとか、小道具さんとか照明さんには、
本当に大変な苦労があると思います。


●たとえば、手裏剣の日々の稽古で良い結果を出している人たちでさえも、
演武大会の本番になったら、大勢の前では、あがってしまって刺さる率が、
7割に落ちる、などということは、日常茶飯事ですし、
それも、何も「他のことに集中する必要がない」にもかかわらずです。

●しかし、役者さんは、さらにここに、前後のセリフを言う必要があり、
前後の動きもあるわけですから、たとえ、ごく簡単な打剣動作でさえも、
その、打剣以外の沢山のやらねばならない事のある中で行う、その困難には
計り知れないものがあります。

●撮影で、ノーカットで「セリフ」を言い、決められた「演技の動作」をし、
そこから途切れることなく、流れるように、確実な打剣もしろ、と言われたら、
師範クラスの人でさえ、ほとんどが撮影現場という、
慣れない緊張感のあるあの独特のプレッシャーの中ではアウトになり、
何度も撮り直しをする羽目になるでしょうね。


そうした「撮影現場の苦労」をわかっている師範の人って、
皆無なのが現実なのですよ。
彼らの専門は、あくまでも流派が継承している武芸のみですから。

だから、演劇などでも、役者さんに稽古をつけるのは、それはいいんですが、
映画とは違って「絶対に失敗が許されない」役者さんのためには、

1/ セリフや動作の流れの中で不自然にならないで、
　　心理的にも負担のない動作に技を組み立て直すとか、

2/ 失敗なく刺さり、かつ音の響きの良い的を特別に用意してあげるとか、
　　それが出来ない場合には、効果音響さんとの打ち合わせが必要になります。

3./ 撮影の照明の中でも、観客の皆さんに、見えやすい剣にするとか
　　こうした「役者さんと監督の立場に立った稽古を組み立てること」
　　の出来る手裏剣の師範は、皆無であるのが現状です。

もしも、いるとすれば、かなり演出に慣れた殺陣師さんですね。



　　　　　　　　平成１７年、７月
　　　　　　　　　　　　　　　　　鈴　木　方　山


　　　　　　　　　　　　　　■

★ . 　　

■この投稿で、一連の「実戦を語る者の自己矛盾」というテーマに
ついては、ひとくぎり、いれます。

ところで、最近、↓のサイトを読んでいました。
ひとつは、むかーし、竹の間の初期に、いらっしゃったこともある
tantanさんの、サイトで、語られていた一刀流のこと。

もうひとつは、では、日本の現在の剣道では二刀流は
どうなっているのかということ。

【一刀流について】
http://mykit.jp/pc/TanTan/

【剣道の二刀流に関する資料】
http://www1.ocn.ne.jp/~masaki-o/sotsuron.html


●この問題というのは、結局、これまでの実戦論議とも
関係あります。
中国武術で、昔、(型だけですが)青竜刀の扱い方を教わったときに、
やはり武器というのは、「身体の延長」と考えることを
教わりました。
ですから、刀や剣を持たずに、青竜刀の型を練習したこともありました。

そして動いてみると、結局は、拳法の型そのままなんですよね。
それにただ、武器がくっついてくるというだけで、
型そのものは、拳法を全くその基礎のすべてとしているし、
型がちゃんとできれば、手に武器を持っても、そう変わらない。

ただし、三節棍とか、九節鞭とか、になると、
単に、拳法の型の延長というのではない「武具の操作要素」もあるのですが、
それでも、打撃法の基本はやはり、拳法だと私は思います。

しかし、日本刀はどうもそこが違う。
私がもしも、近距離戦で、武器を使っていいといわれたら、
日本刀は使いません。たぶん、中国の双剣を選ぶと思います。
理由は、「防御と攻撃が一体」であるので、有利だからです。

*********************************************************

という話は、前菜ということで、本論ですが、

よく、護身術で、鉄パイプとか、木刀に対抗するための技とかやってますけど、
どうして、「上段に振りかぶる相手」という想定が多いのでしょうね。

あれも、あり得ないですよ。

酔っ払いの暴漢とか、剣道やっている相手ならあり得ても、
誰が、自分の正面をスキだらけにする上段なんかに構えますかね。

先で、つっついてくるとか、横から斬るとか、足を斬りにかかるとか、
下から切り上げるとかいうのが、実際の戦闘時のやり方で、
まー、たとえ、トドメでも、
試斬の角度みたいに、斜めに斬るのが一般的ではないでしょうか。
相手の兜を斬り割るというのなら、話は別ですが。


手裏剣に限らずとも、居合いでも、なんでも「実戦想定」という
場合の実戦の「舞台設定」と「ルール」というのが、いつも
曖昧なんですよ。

それで、その曖昧なものを元にした練習なんてものは、
何の意味もなくて、

●いっそ、スポーツ手裏剣といえば、「それは、それで良し」であるし、
その中での競技性がきちんと確立されます。

●また、見世物芸としての手裏剣、これも結構です。
それはまぎれもなく、立派な「技」なのですから。

●また、特に厳密な意味では、実戦的でもなく、見世物芸でもなく、
競技性もない、つまりは、「伝統文化の継承のような手裏剣」、
これもむろん良しです。それに徹すれば。

◆しかし、その、どれにも徹することなく、
曖昧な定義のままに、
たいした、思慮もなく「実戦的である」と吼える人たちを見るにつけ、
どうも彼らは頭が悪いとしか思えません。

◆しかも、初代の教えとは、違う技法や練習法や、
宗家本人不在のままで、生徒たちの「都合のいい解釈」が、
適当に、随時、追加されていっている、という場合には、
そこで、明確に源流からは看板を「分岐」すべきであるのに、
初代の流派名の看板掲げたままという、
矛盾をかかえる流派もある。

私から見たら、こういう連中に宗教経典とか扱わせたら、
ほとんど、オウムの信者らと同じ状態に陥ると思いました。
さまざまな物事の解釈を、勝手に、教祖をあがめるために、
「強引に捻じ曲げる」というのが、その最大の特徴ですから。


■その点では、後述する実戦流派は、完全にそれ自体の体系で閉じていて、
オリジナルなものを付け足すことのない正当な継承方法を取っています。

_______________________________________________________________

■さて、実戦論議ですが、まずもってして、
相手の「戦力や防御力」を「どこまで想定」をするか、
または、「制限するか」という「前提」を打ち立てた上でないと、
実戦論議は、そもそも、「開始すらされない」のです。

______________________________________________________

たとえば・・・、

・相手は、鎧を着ている、そういう時代想定なのか?

・相手は、槍を持って馬上にいるという想定なのか、

・相手は、何の武器を持っている想定なのか?

・相手は、どのような防衛手段を持っているのか?
(たとえば、対手裏剣用の布があるのかとか)

・相手は、二刀流なのか、一刀流なのか、

・相手は、何メートル先にいるのか、

・相手は、知られない武器をさらに保持しているのかどうか、

・相手は銃や弓矢その他の飛び道具を持っているのかいないのか、

・相手を、後ろからただ、闇討ちするのか、

・相手は、動いているのかいないのか、

・相手は一人なのか、複数なのか、

・その場の地形や、天候や、足の踏み場は、どうなのか?
　(たとえば、小型の軽量剣は、突風や、どしゃ降りの雨に弱い。
　重量剣は、天候はものともしないが、
　坂の上や階段の上にいる相手には弱い。などなど)

・相手は同じ国の言葉が通じるのか、通じないのか、
　(言葉のかけひきや、言葉のトリックが有効か無効か)

・その戦闘地における内政、法律はどうなっているのか、
　(戦闘後の自分の身の安否を左右することとなるので)

____________________________________________________


これらのうちの、ごくごく制限された中で、
実戦という想定をしなければならないわけで、

では、居合いでも、手裏剣でも、
一体、「どういう相手を想定しているのか」???、
というところが、常に不明確なのです。

それ自体が、あり得ない組み合わせの対戦とか、
あるいは、あり得ない試合開始の状況などの設定から語られる
実戦などには、何の意味もなく、
また、そういう稽古方法自体が、実戦的だと、呼ぶことすら、
ただただ、傍目に見ていても、こっけいなだけです。
(前にも、居合いと手裏剣の、漫画チックな試合について書きましたが)


●ですから、本当に実戦的ということを論じたり、
流派の看板の宣伝文句のどこかに、控えめに、小文字でいれるにしても、
それは、「どういう試合形式での実戦のことなのか」を
明確にする必要があります。

もしもそれを「無制限」にしたら、
我々は、日本刀一振りで、あるいは手裏剣一本で、
ロケットランチャーや、果ては、核弾頭を相手にすることにまで
なってしまうのですから。


●余談ですが、むかし、ガールフレンドと、とある公園に行ったときに、
入り口で、機動隊の人に、「今、立ち入り禁止なんです」
と言われて、わけを尋ねてみると、
何でも、公園で行われる左翼だかの集会を見張っているのだという。

そのときに、機動隊の人と会話をするなどというのは、
とても、珍しい遭遇だったので、せっかくなので、
機動隊員の人に頼んで、その服の上から、ちょっと、どついたり、
触ったり、殴らせてもらったことがあります。

あれは、金属パイプで殴られても衝撃を緩和する構造なのですから、
手裏剣もナイフも、機動隊の人の服にはほとんど効果ありません。

しかも盾を持っていて、さらに、あのヘルメットの装備です。
火炎放射器か爆発物でもなければ無理です。
刃物以外にも、「古武術のほとんどの武器」が無効になります。

別に、機動隊でなくても、戦国時代の鎧でも、現代の
兵士の装備でも、あるいは、一般的なカジュアルな軽装でも、
「相手が着ている服の種類」によっても、
実戦というものの次元がまったく違ってきてしまいます。

_______________________________________________________

■そんな中で、その舞台設定を、それらの古武術が生まれた時代に
限定する、という、時代劇的な設定の中でなら、
ある程度、実戦ということは、語り得ると思います。

それでも、私は手裏剣に関しては、
(むろん、無冥流も含めて)、現在ある、ほとんどの手裏剣の流派は、

1/多勢に混ざっての「援護射撃」以上の戦力とはなりえないと
　断定できます。

2/また、「丸腰の相手」「または構えていない相手」を
　「全くの不意打ちにかける」という戦闘法においてのみです。

3/あるいは剣と毒物の併用です。


●向き合った状態で、剣術や槍などに対抗できる流派、
または、手裏剣の種類というのは、
その手裏剣が、「大型」または「鋭利な場合」」のみです。

それならば、それこそ、馬上の相手に対しては、
動きの制限される相手の足を砕くことも出来ますし、
また、馬そのものの内臓を破壊して、骨を砕くことも出来ますから、
相手の馬そのものを戦闘不能の状態にすることすら、不可能ではありません。


●これ以外の剣は、一対一で、剣や槍と、手裏剣の、
その双方が、相手の手にしている武器の種類を認識した状態から、
にらみ合い、そこから開始するという実戦については、
語れる要素を持ち合わせていません。

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さて、今回の本題ですが、

>■日本刀と手裏剣どちらが勝つか?===答え「日本刀」なり。


■日本刀という「武具」を指して言うよりは、
居合い術、とか、抜刀術と言ったほうが正しいですね。

手裏剣と居合い、どちらが有利か、と、こういう漫画チックな
検証や推測をしたい場合には、
まずは、「状況設定」がどうなっている場合のことを言うのかを
明確にしておかねばなりません。

たとえば、一例として、手裏剣術の看板を掲げているところは、
4間とか3間の間合いを想定しているところもあるので、
4間以内としましょうか。

では、そこから、どういう形式で試合が開始をされるのか?

これも、時代劇というか、漫画チックに、
居合いの者と、手裏剣の者が、5間程度の間合いで、
双方ともに睨み合いからスタートという、
これまた、「実戦では絶対にあり得ない設定」です。(笑)

あとで、わかりますが、もしも、
そんな形で勝負をする手裏剣術師がいたら、
手裏剣について、何も知らない、ただの愚か者です。


■では、試合がスタートして射程距離の4間の間合いまで、にじり寄り、
手裏剣側が自分の射程内に入ったとします。

ここで、睨み合いになるとしたら、理由はただひとつです。
それは、刀を持った側が「時代劇の見すぎ」であるということ。

ここで、勝負が膠着(停滞する)するのは、
刀を持った側が、飛んでくるかもしれない手裏剣に対する
過剰評価をしているためです。

しかし、手裏剣の弱点を知り抜いていれば、手裏剣を構えた人間の
頭や手足を撥ねることは、造作もありません。


■漫画チックに、刀と手裏剣が構えた状態で、刀の側がすれば
いいことは、ただひとつです。

「そのまま、何も迷うことなく、全力で突進して、追いかけて、
　何も持っていない相手を斬るつもりで、攻撃すればよい」


_________________________________________________________

では、以下にその理由を述べます。

それは、手裏剣術の持つ弱点に由来します。
流派によっては、その弱点を解決していたり、補う方法は持っています。

たとえば、10本以上の細い手裏剣を同時に相手に浴びせる
などです。または剣自体が「強力な威力を持つ場合」などです。

しかし、そうした特殊な技や剣の問題をどけておいて、
ただの打剣の技だけということになると、
こういう事態が発生するのです。


>●1●弱点「連打不能」

たったの4間の間合いを縮めるのに、居合いは、1秒もあれば良いだろう。

そこで、もしも突進してくる居合いの相手に対して、手裏剣側が、
最初の初打を外したり、または当たってもダメージがなかったら、
次の手裏剣を手に持つ前に、斬られてしまうということ。
連打には、時間が全く足りません。

　(ただし、両手を、左右、全く同じような力で使いこなせる人が、
　殺傷力の確かな重量剣(または車剣)を、すばやく両手打ちする、
　という場合は、戦況は、かなり変わってきます。)


>●2●弱点「打剣後は、スキだらけ」

熟練した打剣師は、足を半歩踏み出さず、上体を移動せずに、
振りだけで、剣を打つことは出来ますが、
それとて、前に振った手は、突進してくる居合いにとっては、
ただの斬り落としの「餌食」です。

打剣の後の姿勢というのは、少なからず、前に傾いています。
これ自体が、突進してくる居合い側との距離を縮めてしまっていますし、
何よりも、初打でダメージを与えられなかったら、
あわてて、後ろに引いても、もう遅いです。

またこの状況設定の中では、
横に動きながらの打剣も大した意味がありません。

以前に、横に横転して打剣する「格好だけの練習」をしている
おそろしく馬鹿な男の子を見たことがあるのですが、
そんなことしても、すっくと立ち上がった瞬間に、
撥ねられて、首がなくなっています。
アニメでも見すぎたような、とんだ勘違い練習にも困ったものです。


>●3●弱点「打剣距離の目測」

手裏剣をうまく無効にするには、当然、
射程外に距離をおいてしまえばいいのですが、
それでは、せっかくのタイマンの勝負になりませんね。

そこで、居合い側は、皮膚のひとつやふたつ、
斬らせるつもりで、高速で、手裏剣側に突進して追いかけます。

すると、打剣というのは、標的が遠のくにしても、縮まるにしても、
ちょっとのことで、剣先の角度が狂いますから、
当たっても、大したことないと思えばいいのです。
(剣が長いとか、重いとか、刃が鋭いとか、毒付きの刃の場合には、
　むろん、例外はあります)


刀を持つ手の腕を併用して、少し自分の顔面をガードさえしておけば
いいだけです。

また、「布越しの打剣練習法」でも説明したように、
剣が的中しても、袴の部分など、ダメージはありませんし、上半身も
道着なら、ほとんど、ありません。

問題は、顔だけです。しかも、それすら、無視して、
居合い側は、突進して、追いかけて斬れば、おしまいです。


>●4●剣の威力の問題

加えて言うと、軽量剣は、さらに特に弱い。つまり無力です。

とくに、45グラム以下の手裏剣では、ほとんど勝負になりません。

刀を持った側が、手裏剣に対する「先入観」とかがあって、
「相手がどう出るのか、投げ打ってくるかが解らないから」
という理由で、もたもたと躊躇していれば、それは勝負はつきませんが、

手裏剣の「攻撃力の限界」または「可能性」や、
その「打法の制限」や、「連打不能の不利な点」を知っていて、
迷いなく、突進してくる居合いの相手に対しては、

もしも、手裏剣の初打がダメージがなかったら、
手裏剣側は、もう、そこで「おしまい」なのです。


●ですから、この漫画チックな、4間からの双方の攻撃という「演劇」
の中で、手裏剣側に有利なところがあるとしたら、
それは、その剣が、「おそろしく重量がある」または、「鋭利なもの」で、
体のどこかに当たっただけでも、戦闘能力を削ぐダメージがある場合のみです。
それとて、もしもその連打の打剣をはずしたら、おしまいですが。


●だから、初打を外したときに、突進してくる相手と刺し違えるつもりで、
剣を打たない方の手には、
すぐに掌剣で「攻撃できる形に剣を保持」をしておかねばならないのです。

または別の武器を、その手に準備してある必要があります。
(なんなら、落とし穴でも、掘っておいた方が、いいかもしれません。)
__________________________________________________________________


●このことを、ただ感情的に、否定したい、
手裏剣の愛好家や生徒さんや師範の人がいるのは、
「心情的」には、わかりますが、

「実戦」ということを口先や看板で言うのであれば、
実戦ということの検証が、実際の武器では不可能であるにしても、
安全な代用品を使って、検証してみればいいのである。

　　手裏剣と居合いが、4間の間合いから、互いに相手の存在と
　　「その姿を認識しているところ」から、勝負が開始という状況・・・。

　　居合い側が、何も躊躇することなく、手裏剣側に突進し、
　　逃げたり、かわしても、高速で、追いつめて、斬る。


こんな実に簡単なことで、手裏剣側は死んでしまうのです。

これは、あれこれと否定する前に、
実際に手裏剣を練習している側の人が、
刀側の役の人に、
その、「迷いのない突進しての、連続斬りの攻撃」をさせてみれば、
簡単に解ることです。
(ゴム製の棒手裏剣と、スポーツチャンバラの剣で十分です。)

結果は、実に、あっけないものです。


私は幸いに、近いうちに、時代劇映画やアクションなどの武術スタントの
演技指導をされているチームの代表の方と接触する機会がありそうなので、
そのときに、試してみて、その結果を、またここで報告します。
「やってみないと解らない」というのが実験の一番面白いところですから。

また、やるときには、どういう状況や道具や決まりごとの中で
やったのかの記述がないようなものは、検証とは呼びません。


●だからこそ、手裏剣というのは、
相手に、手裏剣の存在を知られないことがまず第一原則であり、

それが原則であるのに「双方向き合っての試合の絵柄」を「妄想」したり、
または、安全な代用品を使っての、
「そんな状況」での、「これは実戦的だ」と称する稽古、
などしたところで、全く無意味なのです(実戦的という意味では)。


それは、むろん、「動く的を狙う」という練習にはなりますが、
それならば、代用品など使わずに、普通のいつもの金属の剣を、
不規則に、前後左右に、大きく動く的に向かって打てるような
そういう簡単な器具を開発する必要があります。

さらに言うと、そんなものを作る必要もなくて、
畳を、何枚かあちこちに、その距離を変えて立てて、
自分が動きながら、距離と方向の違う、それぞれの的に、
打ち込むという練習をすれば、これが、間接的に
「動く標的を狙う練習」に、なってしまうのです。

____________________________________________________________________


■いずれにしても、今回書いたように、

手裏剣側の使っている「剣」が、
よっぽど、「見るのも、おそろしいシロモノ」でないかぎりは、

　もしも、その手裏剣の弱点を見切った、居合い術が、

　　一本ぐらいは手裏剣を腕に食らうことを覚悟で、

　　　試合開始と同時に、迷いなく高速で突進して、追い回して斬り付けたら、

　　　　あっけなく、手裏剣術師は、2本目、3本目を手に取ることもなく、

　　　　　死んでしまうということです。



■剣術をやっている人は、ぜひ、参考にしてください。

手裏剣側の相手が、何をやってこようが、急突進です。

まー、この場合に、ピストルの弾をよける方法のように、
やや、「ジクザクに接近する」と、より効果がありますが、
相手は、銃弾ではありませんから、そのまままっすぐでいいでしょう。


●結論をまとめますと、
「漫画チックな、試合形式」で、居合いと手裏剣が対したら、
突進してくる居合いに対して、軽量手裏剣は全く無力に近い。

では、「本当の実戦では」、どのように使われたのか?

それは、やはり、「援護射撃」としてです。

また、打剣の距離を伸ばそうとした流派の目的とは、
7間以上の距離で、「相手に自分の存在を知られない位置」からの
「必殺的な打剣」を目指していたわけです。

あるいは、おそろしく鋭利であったり、重量のある手裏剣で
勝負を挑む流派です。


手裏剣というのは、いずれにしても、
まっこう勝負で威力を発揮する武器ではないのである。

まさに、「逃げ隠れ」しながら、打つ、
それこそが手裏剣の「術」なのです。

手裏剣術を知るということは、
「剣の特性」、「その剣の弱点」と「その剣の利点」、それを
先入観や期待や、偏見なしに、知るということです。


そうでなければ、手裏剣がないときに、
剣の代用品など使えません。

また、いつも使い慣れている手裏剣すらも、
威力がなかったり、間合いを誤れば、高速で抜刀してくる
相手には、まったく通用しません。


むろん、これらの「軽量剣の欠点をおぎなう戦法」は、
前述したもの以外にも、いくつかあります。

しかし、それは、それを「映画などの仕事で」必要とする人だけに、
私は、ヒントを教えようと思っています。

___________________________________________________________________


>■　なぜ、私は「実戦論者」に、もの言うか?


●私がなぜ、「実戦」という事について、最近、論じるかの
理由を述べておきます。

手裏剣を、禅の修業の道にしたいという
全くの「無殺生」の方向性の「無冥流」が
なぜ、「実戦想定」ということを論じるのか?

それには、理由がふたつあります。


●ひとつ↓

実戦で実際に、使うか、使わないかは「別問題」として、
いろいろな実戦を「想定する」ことによって、
剣の性能を見直したり、
打法を研究しなければならない余地が、沢山そこから得られること。
つまり、剣の職人としての、私の血が騒ぐわけです。

どういう流派の人からも、「この剣をどうにかしてくれ」と言われたら、
どうにか、改良できるような職人で在りたいわけです。


●ふたつ↓

世の中には、「実戦」ということを、検証はおろか、
ろくに頭の中で、「推察すらもしないで」、ただ妄想している
手裏剣術の流派があるということ。

私は「実戦そのもの」には、ほとんど興味は、ありません。

しかし、ひとつめの理由で述べたように、
その想定が、次々に自分に与えてくれる、
「課題」「難問」の大切さには、いつも、感謝しています。

なぜならば、その難題を解決しようとすることが、
剣の性能や、打法の開発や分析に繋がってゆくからです。
工事現場の人の声を聞く、機械エンジニアのようなものです。


◆しかし、流儀の保存とか、保身という態度から、
きちんとした、実戦論を、「論の上ですらも展開できない」
生徒さんや師範がいるというのが問題なのです。

たかが、机上の論の上ですよ。
実証しろとも、私はあえて言いません。

その机上の論の上ですらも、子供でもわかるような理論にも
耳をふさぎ、臭いモノには蓋をする人たち。

こういう人は、武術家以前に「人として」の問題があります。


●私は決して、いたずらに論議をふっかけはしません。

それぞれの流儀の持つ「社会的立場」も、
使っている手裏剣の「形状」についても
「打法」についても、
部分的に、誤解はあるかもしれませんが、
ある程度の理解をしているつもりの上で、

その上で、では、その実戦という考えには、穴はないか?
もしもあるならば、共に手裏剣術を愛する者として、
共に精進してゆきましょう。

さて、そのために必要な改良法はないか?、
という論点に、最終的な論の焦点を絞り込んで、
論議をしているのである。


しかし世の中には、中身のない空虚な実戦論に頭が固まってしまった人が
いるようです。
実に残念なことですが、それが「その人の人生と運命」ですから私が
とやかく言うことでもありませんが。

しかし、私に反論をするかぎりにおいては、
同じ論という、土俵の上で、斬られることは覚悟してください。


●私は、武術家ではなく、文筆家です。
筆は剣なり、です。

しかし、その文筆という行為や、言葉を、もて遊んで、
いたずらに、論や理屈を持ち出すことを、私はしません。

私の書く文は、常に、「具体的で解りやすい」ということを
心がけていますので。そして、感情論などは一切排除します。


　　　　　　　　　　　　　　　●

ということで、私は、不思議なことに、
この世の中で、
「最も殺気のない剣」
「無心な剣」を目指しているにもかかわらず、

それをつくりだす「背景に横たわるもの」は、
全くその逆の位置にある、「殺戮術」としての手裏剣なのです。

それは、私の遠い過去の記憶に由来するものです。


　　　　　ひとつは無冥流という、無殺生の剣、

　　　　　　ひとつは、暗殺のための、必殺の剣、


この全く相反するものを、
私の内部で、統合をしているだけのことです。

　　　　　　　　　　　　　●

*****************************************************


>●【軽量剣に役立つ、重量剣】について。


どうも、軽量剣を使っている人から、受ける印象というのは、
「自分の手の内で起きていることが不明確」であったり、
誤解をしていることが多いようです。

しかし、それは無理のないことです。
軽量剣を打っていれば、重量感が少ないですから、
剣と指、または掌の間に、どういう摩擦、または力の移動が
行われているか、あるいは手離れはどうなっているかを
感触として、認識できないか、または非常にしずらいからです。

●手の中で起きていることを感触を鋭敏にしても
理解できないか、理解が困難。これも軽量剣の欠点の一つです。

そういった場合には、軽量剣と全く「長さが同じ」で、
同じ断面形状で、ただし、太くて重い剣を打ち込めばいいのです。

すると、手の感触の中で起きていることを理解しやすくなります。


●一番重要なことは、全長が、長くても、短くても、
どちらの場合にも、とにかく、重量剣を打つということによって、
「手の内の感触が感覚として明確化する」という以外にも、

剣の「重さの反動」が自分の身体の各部に、
どのようにかかってくるかも自覚が出来ることです。

打剣のときに、剣の重量が、自分の体の各部にかかってくる
その感覚をモニターできることで、
自分の打剣フォームを見直したり修正することが
可能になります。

これらの感覚的な学習をしたあとに、気づいた事があれば、
諸所の自分なりの工夫を打剣法に、ほどこして、
もう一度、「元の軽量剣に戻って打つ」のです。

こうすることで、軽量剣の打ち方にも、進化というものが
やってきます。

もしも剣が「同じ長さ」であれば、
常に、そのうちの「細い剣の方が、打剣は難しい」ものである。
長さが同じであれば、
太い方は、細いものよりも、打剣は、常に容易である。

(このことは、だいぶ以前に、竹の間を訪問された、
「打剣職人」こと、伊藤さん、という方が、言われていましたね。)


よって、細いもので練習したあとに、太いものを打てば、
打剣は、簡単に感じる。

が、逆に、太く重いものを打った後に、細い剣を打てば、
今まで気づかなかった手の内の「無意識的な操作」や「癖」や、
問題点や、さらには「新しい打法の可能性」にも、気がつくのである。


◆たとえば、7mm径で、長さ16センチの剣を使っている人は、
長さは同じく16センチで、径が9mmとか、10mm以上の剣を平行して、
稽古に使用すればいいわけである。


　　　　　　　　　　　　■
*********************************************************


>【大型剣も、ちゃんとした隠剣である】


■逆に、大型剣の欠点というのは、威力がある分、
スピードが遅くなることであるが、

では大型剣は、隠し武器とならないから、
隠し武器としての戦法を使えないので不利か?というと、
それは、まったくの素人的な思い込みなのである。

■大型剣は隠せないと単細胞的に思い込んでしまうことが
もう、がちがちの、先入観に頭が囚われた状態なのである。

たかが、20センチや25センチの大型剣は、隠せます。
そうでなかったら、マジシャンは、パームしてレモンを隠したり、
あげくには鳩まで、自分の体に隠すことも出来ませんって。

打剣をすぐに出来るほどに保持したまま、向き合った相手からは
大型の剣が全く見えない方法というのは、いくつもあります。

剣というのは、ようするに、手に保持したときに、
先端部が突き出した部分だけを隠せばいいだけですから、
そんな程度の部分は、
上着の裾、自分の腕組みの仕方、他の動作にまぎれての隠し方、
そして、きわめつけは、背景の布地の色などと同色の布を使用した
剣のカメレオン的な、カムフラージュ法です。


また、さらには現代では、身体の特定位置に装着した磁石を使うことで、
10本以上の棒手裏剣を、あっという間に相手の目からは見えなくしたり、
出現させたりすることも出来ます。むろん、動きながらでも落ちません。

__________________________________________________________

つまり、ほんの少しの角度で、ものというのは隠せるし、
自然な動作の連続による、簡単なミスディレクションで
剣を相手に知られることなく、保持することはいくらでも出来ます。
ごくごく自然に相手に向かって何気に歩行しながら、
全く警戒されることなく、下手で顔面に向けて打つことも可能なわけです。

「うちの剣は小さいから、隠し武器なのだ」、
という考えしか出来ない人がいたら、
やはり、勉強不足というか、あまりにも考えが足りないのですね。
小さくないと、隠せない、だから小さい方が有利・・・
全く、「浅はかな考え」です。
そういう人は、初歩的なマジックの本でも一冊読むといいです。


あとは、打つ剣を、かならず「自分が持っていなければならない」、
と考えてしまう、これも、まさに先入観のなせる仕業です。

打つ剣は、あらかじめ、手の内だけではない、
「外部の所定の位置に隠しておく」、という方法もあるのですから。

なんなら、自分の剣を、相手に分からないように、
敵の体にひっつけてしまう、という手もありますが、
これは、さすがに手先が、スリなみに、うまくないと出来ませんが(笑)。


これだけ、分かりやすく、ネタを言っているのですから、
自分の頭を絞って、どうするかを考えてもらうために、
隠し剣の方法の、ネタばらしの、画像は今回は出しませんので。

　　　　　　　　　　　　　■　　　　

★ . 　　

■7/12

私が、独学で手裏剣をやっていて、一番注意しているのが、
「これでいいのか、悪いのか」を判定する何かを常に用意する
ということでした。

そういう意味では、今回のジーンズ生地を標的前につけることは、
かなり役立ちました。
1セット8本打つと、3〜4本も汚く刺さったり、弾かれるミスをするのです。

それを何日か続けたのち、今日、久々に布を取って打剣をしてみたら、
全部が、刺さっているのです。

つまり、今までの打剣角度が間違いだったわけです。

角度の正確さが、とても甘かったのです。
それでも刺さっているから良し、としていたのが間違いでした。

しかし、布越しの打剣を成功させようとすることが、
あきらかにいままでのその甘さを、修正する効果があった、
ということでもあります。

スポーツでもそうですが、何かの負荷をかけるとか、
条件を厳しくする工夫をしないと、上達は止まってしまいますね。

一時、500グラムのリストバンドをつけて打剣をしていたことも
あるのですが、あれは、どうにもよくなかったです。
変な筋力の使い方の学習をしてしまうので、取ると
打剣がうまくいかなかったりした。

今、考えているのは、現在のノーコンをなんとかすること。
前よりはマシになってきたものの、
目標としていた、3間半からのリンゴ大の標的には、ほど遠い。

そこで、このさい、刺すということと、コントロールを
同時にしようとせずに、一度、わけてみて、まず最初は、
刺さらなくてもいいので、狙ったところに剣を持ってゆく
という練習をしたのちに、
そこに刺中させる操作を後から加えてみようと考えた。

どだい、その両方を同時にしようとするのが、
無理があるのかもしれない。

■本日は、ひさびさに自分の打剣フォームを撮影してチェックしてみた。
あいかわらずの、「まったり投法」だが、体重の移動は、安定するように
なっており、剣もミスなく、よく刺さる。
室内では、幅が、85センチしかない狭い廊下で練習をしていたことが、
腕の振りをコンパクトにしてくれたようだが、
まだまだ、身体のあちこちに、不要な動きが多すぎると実感しました。

***********************************************************

7/12

■「布越しの打剣練習」について、

「自宅で、一人で、手裏剣の、真似事をしています」という人から、
こんなメールが来ましたので、解説をしておきます。



>一昨日、薄手のジーンズ生地の端切れを二枚重ねにして、
>発泡スチロール張りの壁に吊して少しだけ試してみましたけど、
>生地がピッタリ壁に添っていれば、いつも使っている手裏剣で、
>問題なく刺さりました。
>生地が離れていたり、壁と平行でなかったりすると、
>多分刺さりにくくなるのでしょう。
>きちんと沢山試したわけでないので、はっきりしたことは言えませんが、


■うーむ、困ったものです。
一体、松の間の講座の、何をどう読んでいたのでしょうね。

1/
まずもってして、私は、問題は「起伏」であると言っています。
しかも、ジーンズの「切れ端」では問題になりません。
ぴったりと添わせる方法では「原則としては」練習にはなりません。

そして、この場合に、問題なのが、
「切れ端」ではなく、ジーンズのパンツまたはジャケット「全体」を
標的に釘などで打つと、とうぜん、的との間に隙間が出来ます、
また、「表と背側の生地の間」にも、隙間が出来ます。
この「隙間と起伏が問題」となる、という点は何度も述べたはずです。

さらに言うならば、ジーンズなどを、ぶらさげた場合に
ジーンズやジャケット「全体」である時には、
どっしりとした「重み」があり、
この重量がまた刺さりこもうとする剣の力を拒む要因となります。


2/加えて、標的が発砲スチロールと、畳や床材マットでは、布を通過
したあとの、その貫通阻害力が桁違いに、違います。

これでは、書かれている、とおり、
「問題なく刺さる」でしょうね(笑)

つまり、何の実検にも、検証にも、なっていません。
強いていいますと、
間違った「布貫通稽古法」を、教えていただけた、という事でしょうか。


■「はっきりしたことは言えませんが」と、
後置きの「複線」を張るぐらいなら、言わない方かいいですよ。

論議というのは、「斜に構えてするもの」ではなく、
たとえ誤解をしていたり、見解がどんなに違っていても、
まずは、はっきりとした自分の意見を、前面に持ち出して、
それを元に、双方が、論議をするべきものですから。

それを、意見とか感想を言うときに、いちいち、
「はっきりとはいえませんが」と前置きを入れたりするのも、
その言葉の使いどころが、文脈の中で不適切な場所にあって、
そのせいで、論議が中途半端になるのは、
とにかく、気持ち悪いですね。

他所の掲示板にも、よく、そういうタイプは、ごろごろいますけど。

●確かに場合によっては、
「はっきりしたことは、いえませんが」と、
前置きをする必要のある話題とか、論点とか論議の流れというものも、
当然、あります。

しかし、このメールの場合には、
そもそも、実験にもなっていないような設定の中で、起きた、
誰が考えても、当たり前の結果を、「問題ありませんでした」
と報告していること自体、
そもそも、メールする意味もないのですよ。


3/
それと、まずもってして、そもそも、
最も大切な点が、「はっきりしていない事」があります。

それは、あなたが、
◆「どういう剣を使っているのか」という具体的記述。
◆ならびに、「どういう打法を使っているのか」ということ。
◆そして「距離はどれぐらいか」。です。
◆そして、一体、何十本の打剣をしてみて、
　そのうちの何本が問題なかったのかという、そういう明確な報告です。


■まー、とにかくですね、この講座に書かれているように、
ジーンズの上下や、武道の道着や、軍用のミリタリーウエアなどを、
畳などの標的に、それらの衣服まるごと、そのものを(「切れ端」ではなく)
その上部を釘で2箇所ほど打って、「ぶら下げて」、
そこに剣を、打ち込んでみれば解ります。
最低でも、2間は距離を取ることです。

面白いこと、というか当然のことなのですが、実際には、
打剣距離が遠くなるほどに、打つ人は、その分、
当然、近距離よりも、力も入れて打剣しますので、
あくまでも「結果論」ですが、
間合いが遠いほど、剣には威力があるのですよ。
特に、60グラム以上の重さの剣の場合には。

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>●手裏剣術は、どのように継承されてゆくか●


■手裏剣術が、組織的に継承され得ることはないと考えてよい。

また、もしもそうした形を取れば、その流派は滅ぶだろう。

師弟の「一対一だけ」という形での、伝承の形は今後もあり得るが、
それとて、突き詰めれば、「必要のないこと」なのである。



これには、理由がいくつがあり、伝統や流派、あるは師という「個人」を
重んずることしか出来ない者、自ら考えようとしない者には、
決してその「裏にある実態」は理解できない。


手裏剣術に関しては、「人」を通じて伝承されることが
必ずしも必要でない、という事において、
やや他流の武術とは異なる点がいくつかある。


その理由のひとつは、いまだその術は、完成をされていないという点。

もうひとつには、剣が、個人で、それぞれに異なるという点。

この2点が刀剣や弓道その他とは、継承の形態が異なる点でもある。


さらに、もっとその奥にある、不可視の次元の真相を言えば、
もしも刀という霊的世界を、刀の神様が統括しているとしたら、
手裏剣を統括しているのは、実は、「剣の神様ではない」ということ。

これについては、いつか機会があれば、述べてみるとして、
今回は、あくまでも、表の世界の話。


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現在、寺坂進師によって5代目となるといわれている、根岸流手裏剣術では、
かつて根岸流の3代目の成瀬師は、2代目の利根川師から、

「釘一本から始まった、手裏剣術を、どうか絶やさないように」
と言われた、と聞いたことがありますが、

ここで言われているのは「手裏剣術」であって、
「根岸流手裏剣術」ではない。(「私の解釈」である)


つまり、継続すべきは、「手裏剣術」という世界そのものであって、
根岸流という、特定流派の事ではない。

その「手裏剣術そのもの」は、それぞれのいろいろな流派によって研磨され、
変形されながら、進化し、あるときには停滞したままで、
今後も、生き続けてゆく。

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ここで、武芸にかぎらず、
他のすべての伝統芸能や、継承されてゆく、職人の技や文化について、
ひとつの問題がある。

それは、いかにして、
それらは「継承」されてゆくか?である。


禅の世界、あるいは欧米であると、魔術の世界、
これらの世界では、一般に奥義と呼ばれるものがあり、
それが隠されるには、正当な理由がある。

ひとつには、それを実行できる環境と資質の者があまりにも少ないことと、
もうひとつは、ある段階に来なければ、
それがその者に何の意味もなさない=(ただの無駄)
という意味での奥義である。
こうしたものは、「ある程度は」、封印されている必要がある。

また、絶対的に数千年もの単位で「封印されていなければならないもの」
というものもあるが、それは、もはや人間がどうこう管理するものではなく、
人ならざるモノの管理下にあるで、いちいち人間が心配することでもない。

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●しかしながら、手裏剣の世界にそんなものは何もない。

もったいぶったところで、せいぜいが、
「剣とひとつになって死ね」という程度の哲学でしかない。


まず、先に述べたように、手裏剣を本当に純粋に愛するものが、
残そうとするのは「手裏剣術」であって、特定の流派ではない。

しかし、「沢山の特定の流派という個々のパーツ」がなければ、
手裏剣という「パズルの全体」も、また伝承されないわけであるが、

その継承はどのように行われてきたか?と、言えば、
最終的には、現代では、それを伝えるのは文字と図、
すなわち、「書籍」なのである。


●これが時代が遡ると、ひとつには、文字を読めない人がいた
ということや、また、道場の存続とか、死活問題から
術の内容が外に漏れることに、極端に警戒心を持ったり、
臆病になったりする者が多かったわけである。

これは当時の「時代背景」や営利的な利害関係を推察すれば、
わからなくもないし、納得は行きます。


しかし、時代が流れ、現代に至っては、
その当時のそうした常識や伝統が、「逆に仇となってしまい」、
今では、手裏剣術として名前だけが記録されている流派のほとんどが、
その打法や剣の実体が解らなくなってしまっている。

このような事になってしまった最大の原因とは、
いにしえの時代の、やむを得ぬ事情により、
手裏剣術を、手裏剣術としてではなく、狭い「流派体系」として、
しかも、口伝で「人から人」へと伝承しようとしたせいである。

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「手裏剣術」全体の世界というものは、
今どのようにして、継続しているかというと、
それは、実は、その多くが、看板なしに、継続しているのである。


たとえば、多くの人が、自己流に手裏剣術を実践したとします。

すると、その中には、根岸流の流れを組む人もいれば、
香取神刀流の流れを持つ人もいれば、現存するその他の流派の流れを
学んだ人もいます。

なんとか、こうして人から人への伝承によって現代まで生き延びた流派の
打法や剣があったとすると、それを学んだ人がいれば、
たとえ、その人が、その流派の看板を持っておらず、
一人きりで稽古を継続し、かつ、現在のその打法が、
前のものとは違っていたとしても、
それでも技は「継承されている」のである。

つまり技というのは、流派の「看板」によって継承されるのではなく、
「その技を持った人によって継承される」のである。

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たとえば、根岸流の流派で一旦学んで、その後自己流を
立ち上げたとします。

もしもその人が、他者に、あるいは、書籍などで、
「前には、何の流派に、何年、属していたか」を言明さえすれば、
その時点で、そのルーツ(系図)はわかりますから、
根岸流の技法の一部は絶えません。


つまり、ここで何が言いたいかと言いますと、
その流派が誰かによって一度、とにかく正しく学ばれたことがあれば、
その人が、どこかで違う名前の流派を立ち上げたとしても、
その人に、「以前に教えられたその流派の技をみせてください」といえば、
その人は、必ず昔に習ったものは、再現することが出来ます。


つまり、技は、「看板の元」に継承されるのではなく、
事実問題として、だれから、どう、「どこまでを学んだか」で、
「その中身」が、継承されるわけです。


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しかし、ここで起きてくる大問題というのがあります。
それは、「初代から、正しく継承された、されていないか」
といった、門下同士での意見の相違や対立です。

だれが正しく継承しているか、継承していないか、という問題が、
単なる口論以外にも、
「実際問題としても、発生」している可能性があります。
そこで、これを避けるために最も良い方法が、「著作物」なのである。


初代の教えは、初代自らが、自分で書き上げるか、
または、弟子の一人が、初代の言葉をただの一言も曲げることなく
書として生み落とせば、
それは「審査請求を放棄された公開特許」、
または、専有期限の切れた特許のように、一般公開されるわけですから、
「だれが、その流派を継承しているかという問題」は、
そこでは消滅して、なくなり、
それを実際に出来る人が「実質的な継承」をすることになります。


手裏剣術の世界から、
死活問題や、道場の存続などという、低俗で、くだらない狭い考えが、
消え去って、書籍というものによって、
純粋に技法が開かれたものとして継続していれば、
それは、今も、どんどんと進化を続けていたはずなのである。

しかし、残念ながら、現在では、
「名前」と、「残存した剣の記録だけ」しか残っていない流派が
手裏剣の流派にはたくさんあるようです。


しかし、これが、もしも、「その当時に」、
文字と図にすべてに書き下ろしていれば、
このような事態にはならなかったのですが、
しかし、それは前述したように、
「当時の利権的な状況」がそれを許さなかったわけです。


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それでは、この今の、現代では、どうでしょうか?


近代、手裏剣術をされているかなり多くの人たちが、
昔から言われてきたように、
「一人一流」をなしているところがあります。

その原因は、探究心のある者ほどに、必ず、納得がいかなくなる
ということが、道として、ごくごく自然な事であり、
それがまた、未だ未完成の手裏剣術を進化させる人たちでもあります。

時には邪道に流れつつも、人の思惑や、流派を超えた
手裏剣というものの「本流」の大河が、常にそこにあります。


自分の中に、もしも誰かから伝承されたものが、あるのならば、
それは、一字一句、間違いなく、書籍に落とせばいい、

それで、その継承作業、「継承の責務は、終わり」である。
そして、現代では、それが出来る環境が完全に整備されている。


前に、私は、ネットで「自分の学んだ手裏剣術の継承者を探している」
というページを見かけたことがありますが、
そんなものは、書籍とDVDにすれば、済むのです。そこで、終わりです。

ただし、もしも「看板ごと継承した」と「言うからには」、一字一句、
先代から継いだものを、何ひとつ曲げてはなりませんし、
追加しても削除してもなりません。


そして、それが終わったら、さっさと、
「新たな、自己流」を名乗ればいいのである。


ただし、もしも人がその人に、前に学んだ流派の打剣を
見せてほしいといわれた場合には、その以前の打剣も
可能であるわけですから、どこも技が途絶える心配はないのです。

これが、流派は、「流派の看板によって継続するのではない」という意味です。
そして、知識的な継続は、書籍で十分であること。
否、むしろ、それをしないこと、しなかった事が、
未だにどこかに隠れている、まるで手裏剣の落とし子のような
次の世代の人たちの育成と、
その人たちと手裏剣との出会いを、遅らせてしまうということです。


人は、継続したものを吐き出したら、
あとは、流派という細い川ではなく、
太い本流に合流すべきである。

____________________________________________________________________

ところが、たまにですが、
「看板がないと、その流派の技が途絶える」と、
勝手に、思い込んでいる者がいたり、
あげくには、流派の看板というものを、「人が集まるきっかけ」に
利用してしまう者がいるようです。


たとえば、どこかに、とてもとても無欲で、
自分の技を特別に熱心に、特定の誰かとか、弟子を通じて、
後世に伝えようとも、全く思っていない、温和な方がいたとします。

その人は、全く無欲で、流派の名前の継承などということは
どうでもよくて、自らの手裏剣の記録さえ、後世に残せればそれでいいという
そういう人であったとします。

それを弟子が、「流派がなくなってはよくない」と、勝手に思い込んでしまい、
流派を組織化したとします。
人が集まるきっかけ、人が手裏剣に接するきっかけ、
という「名目」「理由」などによってです。


しかし、先代の師の真意を言えば、宗家は、全くそのようなことは
「望んでもおらず」「かつ拒否もしていない」。
すなわち、どっちにも、全然、頓着していないので、
師には、看板の継続などは、
　　　　　　　「どうでもいいこと」なのである。


だとすると、「看板を継承した」と称する者は、
一体何を「勝手に継承」してしまったのだろうか?

仮にもしも、その先代の師が弟子に、
「君の好きにしていいよ」と言ったとしたら、
それは、師にとっては、
「別に、人から人への、技の伝承など、途絶えてもいい」
と思っていた、ということなのである。

つまり、そういう問題には、師は
「何も、期待も失望もしていない」のである。

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これが、もしも「自分の技の本質は、まだ世に、伝え得ていない」、
と思うのであれば、
それは、人をして、あるいは流派の看板を使ってでも、
なんとしてでも、伝承する努力をしたことであろう。

そのときに師から弟子に対して出てくる言葉は、利根川師と同様に
「もしも途絶えたら、もう永久に未来には復興しないから、頼むぞ」
になるのである。


しかし、その師が、すでに「自分の言いたいことは言い得た」、
「教え得た」と思っているのならば、
その師には、「流派の存続などは、どうでもいいこと」なのである。


その師本人が、「どうでもいいと思っていたこと」を、
弟子が勝手に、「どうでも良くないと思い込んでしまい」、
流派を存続させることに傾き、
手裏剣術そのものを発展することに、純粋に精神と魂を注がなくなり、

自分で勝手に背負った看板の下で、
「流派の良い子」である事を自分に強要し、
自分で好き好んで、自分の首手足を縛って、
過去の人間に(学ぶのではなく)「束縛」をされるのであれば、

それは、手裏剣術そのものの本流からは外れた、
「血流の悪い」、「細い川」でしかない。

むろん、「細い川の存在」を私は、否定などしない。
が・・・細すぎる川は、たとえ、つかの間だけの激流を得たとしても、
いつか、途絶えることは間違いない。
否定はしないが、未来の時間の中でのひとつの事実である。

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人が、むやみに動かず、立ち止まって、考えるべきことは、
「では、そもそも、何のための組織なのか?」ということなのである。

「手裏剣に関心のある人を集める、
　きっかけの場の役割を果たす組織を作ろう」、
などという【手裏剣の師】は、この世界の、どこにも、いやしない。

「技を伝えるために、人材を探しなさい」、
これならば、いろいろな世界で、あり得るが、
しかし、それはたった一人にでも伝われば、
どこかで、それは今後も、生き延びるのであり、
それが、「組織である必要はない」。


またそれが、一人の人から一人の人へと、
何人かの人に受け継がれれば、
それは、さらに多くの人に、受け継がれる。
そして、「書籍になったもの」については、
だれも、それを特定の「個人」が、
継承の責任を負ったり、自ら進んで受け継ぐ必要もない。


◆組織というものの最大の盲点であり、
企業などでもよく知られた弊害は、
その組織に属する者の、無自覚な動機には、
必ずしも、組織の本来の目的には適合しない部分があることがある点だ。

たとえば、権威とか組織の下に安住することで、自分を安心させたい
という保身的姿勢や、誰かに守ってもらえないと、
論議すらも出来ないという、腰砕け状態の「松葉杖」として
組織や権威や、何かの名前や「言葉」を使う者。

こうした者を呼び寄せてしまう組織というのは、
かならず、本来の目的に無自覚なまま、大流から外れてゆきます。

大流から外れた川は、細くなるので、いっときだけ、水流が勢いを得た
かのように、勘違いをしてしまいますし、そのゆく先の、土地柄で、
ほんの一時は、少数の村人の乾きを、
ほんの一時的にだけ癒すかもしれませんが、

しかし、この表の目では見えない、
影の世界の「大河」から外れるということは、
ひとえに、潤いの水が、やがては、供給されなくなるということです。

___________________________________________________________________


かくして、今後は、
手裏剣の流派というのは、
「一代で終わりとする」のが、最も理想的かつ、正しい道だろう。


たとえば、どこかに根岸流、白井流、戸隠流などを学んだ人が、
「未来流(仮名)手裏剣」を立ちあげたとします。

その人は、書籍の中に、自分がそれらから学んだということを記し、
その教えられたすべての事を読者のわかるように記す努力をし、
さらに、その源流の技を、体が忘れてしまわない限りにおいては、

その者が、たとえ、新しい一流(一代限り)の名前と、
独自の打法をもって、稽古や、指導をしていたとしても、
脈々と、どの古流派の技も、
どこかで誰かの中に生き続けてゆくのであるから。


もしも、実地に教えないと、技は、伝わらないと言うようであるならば、
その者は、人に「物事を正確に伝える能力がない」か、
あるいは、どう言い訳をしても、
意図して、古人の知恵を、小出しにして、
継承という名の下に、それを自分でも全く無意識のうちに、
私物化しているだけの事なのである。

__________________________________________________________________


これは現代においては、何も手裏剣のみならず、
多くの伝統芸能や、「ものづくりの現場」にも言えることです。

しっかりとしたマニュアルさえできれば、いろいろな伝統工芸の技も
全く名もない、縁もない誰かに、正しく伝達されることは十分にありますし、

また、技のルーツの「枝分かれの系図」さえ明確に示されていれば、
その元の技を、系図上の、生きた誰かを通じて、
目にすることも出来るわけです。


たとえば、もしも私が、今後、根岸流の正式な打法を学びたいと思えば、
正式な5代目、あるいは、後の6代目の継承者という方のところに
伺うという方法もありますが、

一方で、もしも、その人に、根岸流とは別の真流派を名乗る、
兄弟弟子の方がいたならば(実際、おりますが)、
私は、その兄弟弟子の方から、源流の打法を学ぶことが出来ます。
もしも、その人が、まだ当時に教わった打法を再現できればの話しですが。

こういうことからも、誰に継承された技が、本物か偽者かという
混乱を後世に残さないためにも、
現代における、最も良い方法とは、
すなわち、
　　　↓
____________________________________________________________________

1●
自分が、たった今、今日そこで、死んでも、
　自分以外の誰かが、それを捻じ曲げないように、
　　そうした兵法書は、
　　　「当事者の一代目の者が自分で、正しく、技を書き残す」こと。


2●
そして、もうひとつ大切な事は、いかなる理由があるにせよ、
　流派名(看板)を、「2代とは、継続しない」こと。
　100歩譲って言えば、看板と、数人だけの組織は、
　「初代の時代」にはあってもよかろう。
　しかし、同一流派名の2代目は、存在してはならない。

_____________________________________________________________________


もしも、万一にも、先代の「流派名称を継続する」のであれば、
そこには、絶対に、
ただのひとつも、「自分による新しい技術の発見」や、
「新しい解釈」などを、たとえ、推測でも、「追加してはならず」、
「源流には、一切余計な手をつけず」に書き記し、

もしも、何かの気づきや、発見があった場合には、
「源流の流派とは、別の新流儀」を名乗って、
系図の「配線」を、明確にそこで枝分けをすることである。

これが、正しい「流派の継承法」ということである。

つまり継承には、
1/本質の継承と、
2/事務的な形としての継承という二つのものがあり、

後世の研究者や実践者たちのためには、
この二つを、決して、ひとつに混合してはならないということである。

たとえば、初代の論理や打法の中に記述のないものが
2代目、3代目以後に、途中からその流儀の中に、登場などしてしまったら、
初代の技にのみ興味の対象のある人には混乱を招くからである。
その時点で、もうそれは、ひとつの「別流」なのであるから。

1/本質を時代に継いでゆきたいのであれば、
徹底して、何ものからも「自由」であれ。

2/形(資料価値)を時代に継いでゆきたいのであれば、
徹底して、その流儀の下僕となりて「不自由」であれ。

つまりは、そういうことである。
どちらの道も、それぞれに、間違ってはいない。
ただ、姿勢が、どっちでもあるような、ないような、そういう、
「中途半端である」ことだけは、最悪のことなのだ。

_____________________________________________________________________


しかし、実質的には、人は、流派名を継続する必要などどこにもない。
真に継続されるべきは、非人格的な「技と剣そのもの」であって、
特定の個人や組織名や看板ではないのである。

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■ちなみにも、私の「無冥流」は、全くどこの系列にも属しませんし、
何ひとつも、正式に、どこかの流派から学んだものもありません。

そして、無冥流は、私一代で、死すものです。

誰ひとりも、今後、それを名乗ることは、ありません。

無冥流から、使えそうな技法をパクった人は、
無冥流は名乗らず、「無冥流のどこどこを、参考にした」、
ということだけを後世に対しては明確に記して、
ひたすらに、自分流、オレ流に、

つまりは、手裏剣が、その霊的世界での特異な性質からも、
元来そうでしかあり得ないように、

　　　　　「一人一流」に邁進してください。


それが、私が、今回、「中級手裏剣術」を書き記すにあたって、
最も、望んだことです。


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