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[566]
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★分割自我復元★その566●【小説/夜中の宅急便】●
by:
鈴木崩残
2016/01/11(Mon)02:08:20
「夜中の宅急便」
●皆さんも、宅急便を利用していると思いますが、
本当に便利な世の中になりましたね。
いつでも、どこへでも荷物を届けてくれる。
そんな、ありがたーい、宅急便に、
私たちの生活は支えられています。
でも、・・・・
もしも、その宅急便が、夜中にやってきたら。
あなたはその時、
どうするでしょう?
(ここまでは、タモリが、あの口調で、しゃべっていると思ってください)
*********
「 夜 中 の 宅 急 便 」
妻が手洗いを済ませると、夫の部屋を覗き込んだ。
妻「あなた、もう2時よ。寝ないの?」
夫「このレポート、明日の会議に間に合わせないとならないんだ。」
妻「それなら、しかたないんだけど、無理しないでね」
夫「大丈夫だよ。あと少しで終わりそうだから」
妻は、眠そうな顔をして自室に戻ろうとした。
その時、チャイムが鳴った。
ピーンポーン
妻「え? 何かしらこんな夜中に・・・」
夫「何かの間違いだろ。チャイムの調子が変なんじゃないか?」
妻「あ、そうね。じゃー、私は寝るわよ」
またチャイムが鳴った。
ピーンポーン
妻「あなた、、、誰か来たみたいよ」
夫「こんな夜中にか?」
妻「なんだか、気持ち悪いわね。犯罪者か何かじゃない?」
夫「しばらく、放っておこう」
チャイムが鳴る
ピーンポーン
夫「いや、もしかしたら、誰かが困って助けを呼んでいるとか、
そういう事態になっているとか、まさかないだろうな?」
妻「私、いやよ。変なことに巻き込まれたくないわ」
夫「とりあえず、不審者がいるって、警察に電話するか?」
それを聞くと、妻は、少し強気になったのか、
玄関のドアの向こうに向かって、つぶやいた。
妻「あの、、、どちら様ですか?」
ピーンポーン
むっとした顔になった妻が、少し大きな声で言った
「あの、どちらさまですか!」
「宅急便です」
妻「あ、ちょっと待ってください。今、あけますから」
すると、夫は妻を諭すように言った。
「おい、ちょっと待てよ。こんな夜中におかしくないか?」
妻「あなた、何か今日、届くようなものあるの?」
夫「俺はないさ。お前は?」
妻「私もないわよ。」
夫「いくらなんでも、こんな夜中に届けに来るわけないじゃないか」
妻がドアに向かって言った
「あのー、明日にしてくれませんか。もう時間も遅いですし。」
配送人「こんな夜中にすいません。
でも、これ、今日届けないとならないんですよ」
妻「あなた、ああ言っているわよ」
夫「だけど、変じゃないか。夜中の2時だぞ」
妻「じゃー、あなたからも言ってよ」
夫はドアの近くに歩み寄ると言った。
「荷物はどこからですか?」
配達人「えーと。 木村様、と書いてあります」
夫は妻に言った
「木村って、お前の友達か何かか?」
妻「木村、、、、木村、、、、あ、
木村って、先週、法事で会った、あの木村さんじゃない?」
夫「え、俺、知らないよ」
妻「あなた何言っているの。私の母が世話になったと言っていた、
あの木村さんじゃない?」
夫「いや、覚えていないよ。俺、けっこうあの時、酒飲んでたから。」
妻「しょーがないわねー」
ピーンポーン
チャイムが鳴る。
配達人「あの、判子をお願いしたいんですけど」
妻は、はっとしたような顔をして、夫に言った。
「あなた・・・この声、いつもの宅急便の人の声よね?
ほら、あなたも何度か受け取っていたじゃない?」
夫「あ、、、、あのいつもの人か。確かに声はそうだな」
妻「でしょ? あの人なら大丈夫よ。だっていつもの、あの人よ。」
夫「そりゃそうだけど、でもやっぱりおかしいよ、こんな夜中に」
妻「そう思うなら、コールセンターに問い合わせみたらどう?」
夫「おう、そうだな。ちょっと待ってもらってくれよ。
今、すぐに電話するから。」
そう言ってみたものの、夫は思った
こんな夜中にコールセンターがやっているわけないじゃないか・・・と。
妻「あなた、どうしたの? 電話しないの?」
すると、ドアの外で、雨音がし始めた。
雨音はすぐさま、強くなり、本降りになった。
夫と妻は、困ったように顔を合わせて、沈黙した。
チャイムが鳴る。
ピンーポーン
配達人「あのー、これ届けないと、私、仕事をあがれないんですよ。
お願いします。判子をください」
妻「あなた、ほら、
あの、いつもの宅急便の人の声に間違いないわよ。
それに、かわいそうよ。
こんな雨の中で、会社に戻れないって言っているじゃない」
夫「でも・・・・」
妻「いいわ、あたしが出るから。
荷物を受け取って判を押せばいいだけじゃない。
そう、それだけのことじゃない。私が出るわ」
夫「いや、俺が出るよ。俺が出る。
万一のことがあったら困るから、俺が出るよ」
妻「そう・・・そうよね。うん。
じゃー頼むわ」
夫は言った「今、あけますから、ちょっと待ってください」
妻も、立ったままで、夫の背後からドアを見ていた。
夫は、ドアのチェーンを外して、ドアを開けた。
すると、いつも宅急便の人とは少し違う、体つきの大きな男が立っていた。
宅急便の配達人であることは間違いないように見えた。
荷物を見ると、差出人は「木村」と書いてあった。
夫は、振り返って、妻に言った。
「確かに、木村って書いてあるよ。
判子を、持ってきてくれないか?」
妻「わかったわ、ちょっと待ってて、すぐ持ってくるから」
夫は、ほっとして、再び配達人の方を向いた。
なんだ、結局、普通の宅急便だったんじゃないか。
そう思った。
すると配達人はこう言った
「ほーら、
やっぱり、
ドアを開けたじゃないか」
***************************
●この後、この夫婦がどうなったか、
それは、皆さんの想像に任せます。
真夜中のホラーですね。
もしかすると、夫が先に殺されてしまい、
判子を持って戻ってきた妻も、被害に遭ったのかもしれません。
しかし、このショートストーリーが皆さんに伝えたいことは、
別にあります。
この夫婦の会話をよく見ると、
そこには、次のような無自覚的な願望があることに気づいたでしょうか?
夜中に宅急便がやってきた。
絶対にあり得ない、非日常的な出来事です。
昼間の宅急便ならば、どこもまったく不思議ではない。
しかし、その日常のことが、
夜中に起きたというだけで、「非日常」になります。
そして、その非日常に出くわした、この夫婦は、
変だと警戒しながらも、やがて、
その非日常を受け入れがたくて、
何とかして、
その非日常から、日常へと戻れるような「解釈」を始めました。
絶対に「非日常的なこと」が起きているのに、
声が同じだとか、木村さんは覚えがあるとか、そうやって、
夜中に来るはずもない、その宅急便を、
なんとかして、「日常」の常識の中に、戻そうとしてしています。
それは、自分自身が、安心をしたいためです。
早く、その異常事態の現実から、逃げ出したいからです。
これは異常なことじゃないんだ、と、早く思いたいからです。
そして、それを電話をして、確かめようとしたときに、
雨が降りはじめ、配達人への同情心も生まれ、
ドアを開けない自分たちに、罪悪感すら感じはじめました。
そして、最後に、何かあっても良いように、いちおう覚悟をして、
夫がドアを開けることを決意します。
しかしそのころには、もう、ドアを開けない罪悪感の前に、
最初に感じた、この非日常的で、
非常識な事態が起きていることへの警戒心は、
かなり、薄れてしまっています。
そして、夫の手で、そのドアが開かれました。
「ほーら、 やっぱり ドアを開けたじゃないか」
宅急便の 配達人が
言うはずもない 言葉
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